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七十三学期 妹を名乗る者

「……さて、じゃあ瑞姫ちゃんとも合流した事だし、ここからは3人で学校を巡ろうか」


 私の意見に乃土花ちゃんも喜んでくれた。


「良いね! お兄ちゃんの友達の事もっと知りたいし! よろしくお願いします! 水野さん」



「よろしくです。土御門さん。……ところで、日和さんとはいつからの付き合いなんですか?」



「うーん。幼稚園の頃には既に仲良かったですね。一緒によく遊んでましたよ」



「えぇ! そっ、そんな昔から! 良いなぁ……じゃなくて、それじゃあかなり付き合い長いんですね」



「そうですねぇ。私とお兄ちゃんは、兄弟みたいな感じなので」



「……《《お兄ちゃん》》?」



 乃土花ちゃんの言った言葉に流石に疑問を感じた瑞姫ちゃんが顔をキョトンとさせていたので、彼女達よりも前を歩いていた私が、教えてあげる事にした。



「……乃土花ちゃん、昔からどうしてだか分からないけど私の事をお兄ちゃんって呼ぶの」




「……えぇ、でも日和さんは女の子ですし……」



「いえ! 女の子でも……お兄ちゃんは、お兄ちゃんなのです!」



 何言ってんだこの子……。という表情を浮かべる瑞姫ちゃん。いや、正直私も同じ気持ちなんだ。どうしてこの子は、昔から私の事をお兄ちゃんと呼ぶのか……。謎でしょうがない。瑞姫ちゃんは、しばらくこの事について考え込んでいた。考え込んだまま何も言わずに歩き続けていると、今度は乃土花ちゃんの方から瑞姫ちゃんに話しかけるのだった。



「そういえば、水野先輩はお兄ちゃんとはお友達なんですよね?」



「え? うっ、うん……まぁ、そっそうなるね。今はまだ……」


 最後の方、なんて言ったのかよく聞こえないがどうしてそんなに挙動不審なんだこの子。



「……そうですか。では、聞いてもいいですか?」



「え? あっ、あぁ……どうぞ」



 どうしてだかタジタジの瑞姫ちゃんに乃土花ちゃんは続けて質問する。



「……お兄ちゃんに恋人はできましたか?」



「え!? こっ、こここここここここここここk! 恋人ォ!?」



「はい! やはり、昔から付き合いのある妹であれば、そう言った情報も聞いておく必要があると思いまして……」



「ちょっ! 乃土花ちゃん!?」



「お兄ちゃんは、黙っていてください。これは、妹である私にとって大事な務めなの!」



 意味分からんて……。務めって……。いや、というか初対面で礼儀正しいなと思ったら……いきなり凄い事聞いちゃったせいで瑞姫ちゃん困っちゃってるじゃん!




「……えっ、えぇーと……こっ、恋人っていうのは……」




「はい。お兄ちゃんは、かなり美人ですよね。それでしたら、お兄ちゃんを狙う男ってかなり多いと思うのです! 中には、ヤバイ人もいると思います。ですので、妹である私が、お兄ちゃんの事を守ってあげないといけないので……」




「いや、ちょっと待って! 大丈夫だから! 私、恋人なんて作ってないし……作る気もないから!」




「ぇ……」



 一瞬、瑞姫ちゃんから小さい声が聞こえてきた気がするが今は気にしてられない。すると、そんな私の言った事に乃土花ちゃんが続ける。



「……本当に? お兄ちゃん、かなりモテるじゃん。高校で既に2人くらい男を手玉にとってるんじゃ……」




「しないよ!」


 どうして、俺がオスなんかを手玉にとるねん! アホか! とまぁ、言っても分かってくれるのはせいぜい愛木乃ちゃんくらいか……。乃土花ちゃんにも自分の前世が男だって言った事ないしな。



 すると、乃土花ちゃんは隣を歩いている瑞姫ちゃんに確認をとるのだった。



「本当ですか? 先輩」



「え!? あ、あぁ……はい……」



 ……ん? 瑞姫ちゃん、急にまた元気ない感じだけどどうしたのだろう? もしかして借りた本が多すぎて少しバテてるのかな?




「まぁ、分かりました。先輩も承認してくれましたし。お兄ちゃんに恋人はいないという事で……」




「当たり前でしょ! もうやめてよ」



 どうして俺がオスを好きにならなあかんねん! まぁ、かといって女の子と恋愛関係になれるかというと……正直、分からないのだけど。




 と、そんな事を考えていると隣で私達の掛け合いを笑っていた瑞姫ちゃんが改まって私達に話しかけてきた。




「……あっ、ごめん。私ちょっと本が重くなってきたし……そろそろ帰るね」





「あぁ、ごめんね。やっぱり無理させちゃってたね。分かった。また今度会おうね」



「うん。……ありがとう」



 瑞姫ちゃんは、そう別れを告げると先に帰ってしまった。途中から元気をなくしていたのは、やっぱりそう言う事だったのか……。少し悪い事をしたな。



 私は、心の中で少しだけ反省した後、瑞姫ちゃんが去って行った後ろを向いたままの乃土花ちゃんに話しかけた。




「……さっ、私達も学校廻りの続きやるよ?」




「……うん。分かったよお兄ちゃん」



 乃土花ちゃんは、そう言うとすぐに私のいる方へ歩いて行った。





 この時、私は一瞬だけだが乃土花ちゃんが少し笑っているように見えた。いや、彼女は下を向いていたから確信はないが……どうしたんだろう? 何か面白いものでも見つけたのか?




 まぁ、良いか……。

次回『妹でいたい者』

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