六十九学期 花火を見る者達
火乃鳥先輩と無事に合流できた私達は、早速お祭り会場を離れてブルーシートの敷いてある所に戻った。大勢の人達がブルーシートを敷いて皆でお酒を飲んだりしながら花火を待っている中、私達の予約したブルーシートはというと……。
「おーほっほっほっ! 皆さん、金閣寺財閥に感謝なさい。わてくしが、この日の為に半径20mを貸し切りにして差し上げましたわ!」
というわけで、とっても分かりやすい位置にブルーシートが敷かれていた。いや、敷かれているシートもブルーじゃなくてゴールドなんだか……。まぁ、それは良いや。ツッコまないようにしよう。
と、そんなこんなでもうじき始まる花火に備えて私達が、それぞれブルーシートの上に座ってボーっと夜空を眺めていると、私の隣から水野さんが喋りかけてくる。
「……それにしても流石、日下部さんです。本当に火乃鳥先輩を見つけてしまうなんて!」
すると、今度は逆サイドに座る愛木乃ちゃんが言ってきた。
「……そうですね。最初は、北極星がどうのこうのって言いだした時は、訳が分かりませんでした」
「……ははは、昔からよく使われるやり方だからね。古典的ではあるかな……。北極星の指し示す方向に歩いて行くっていうのは……」
「……」
私達は、そんな会話をしながら花火を待っていた。……この時、火乃鳥先輩の視線が私に向いていた事に私は、気づかなかった。
少しすると、私達は夜空の上を照らす美しい花のように輝く花火を黙って見るのだった。
夏の始まりを告げるような……そんな風情を感じる花火だった。
そういえば、前世でも迷子になった小さい女の子を助けて、迷子センターに行く帰りにその幼女と一緒に花火を見たっけな……。あの時の花火も凄く美しかった思い出がある。
あの日助けた幼女は、今じゃもう大人になっているのだろうか……。はぁ、あの時……光源氏のように自分好みの女に育て上げる作戦を実行していれば、今頃は……。といっても、結局その後死ぬ運命だったし、変わらないか……。
次回『幼馴染である者』




