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五十八学期 気まずい者ら

 しばらくして、水野さんと千昼ちゃんのいる公園の中に私=日下部日和はやって来たわけなのだが……その時には既に公園の雰囲気がなんだかとても重苦しかった。水野さんとは、確かに気まずい感じが出ていたし、千昼ちゃんも水野さんからちょっと距離をとっているような……やっぱり、あの子も自分の口から勇気を出して言いだす事ができないのだろう。



 こういうちょっと気まずいなって時、男だった頃の前世の”俺”なら……男同士で喧嘩をしても時間をかけて合わない日をあえて何日か作る事で関係を一度軽くしてもう一度、ふとした所で明確なものでなくとも仲直りっぽい事をして、今まで通りみたいな感じにしてその場で関係をやり直したりしていた。また、謝る時もわりとちょっとしたら軽くでもお互いにごめん位は、言えてしまうしその後も仲良くできてしまう。


 ……だが、女の子同士の仲直りというのは、私にはよく分からない。男のようにある意味平和的で単純にはいかないだろうなと思っているし、それも覚悟のうえで今ここに来たわけだが……うーん。大丈夫なのだろうか。




 私は、ひとまず水野さんと千昼ちゃんが別々の場所に座っているベンチの元へ走って行くと2人と合流して、そして2人の事をそれぞれ見た。千昼ちゃんは……さっきまでの感じと全然違う。やはり、謝ろうと思っても気まずいのだろう。水野さんも……なんだか、少し暗い雰囲気だ。




 私は、2人の事を交互に見ながら黙っていたが、しばらくして意を決して言う事にした。



「……あのさ、水野さん! さっきは、その……言い過ぎちゃってごめんね」



 このままだと、私達は謝ろうとして結局誰も口を開かないまま中途半端に時間だけ削って終わってしまうと思ったからだから私は、先に言う事にした。まぁ、私は見た目は紛れもなく美少女だが、中身は乙女じゃない。こういう時、最初に先陣斬って何かを言うべきなのは、自分だろうという事は何となく分かっていた。



 そして、この予想通り、私が最初に謝った後に続いて千昼ちゃんも気まずそうに口をもごもごしながらゆっくり開いて喋り出した。



「……その、私も……変なアドバイスをしちゃってごめんなさい。私、その……水野さんを傷つけるつもりじゃなかったんだけど……こうなるとは、思わなくって……」


 千昼ちゃんも真剣に頭を下げて謝っていた。そんな私達2人の様子をチラッと見て、水野さんはしばらく下を向いたまま考えていた。彼女は、何も言わずただ悲しそうな顔をしたまま下を向いている。





 ……少しすると彼女は、口を開くのだった。



「……大丈夫だよ。気にしてない」


 彼女が、やっとの思いでそう口を開くと、その時ちょうど公園の入り口から夜宵ちゃんと渚朝ちゃんもやって来て、ここで全員が集合する。そして、それにいち早く気づいていたのか水野さんは、千昼ちゃん達には、気づかないように暗かった顔を無理やり笑顔に作って、言うのだった。




「……私こそ心配かけてごめんね。もう今日は遅いし、途中まで皆で帰ろうよ」



 その言葉に千昼ちゃんは、喜んだ。どうやら、彼女らの問題はこれで解決できたようである。まぁ、元々千昼ちゃんと水野さんの問題は大した事がないと言ってしまえば少し酷いかもしれないが、お互い本気で考えた上で起こってしまったものだから、謝罪1つで何とかなるものだったのだろう……。







 問題は、やっぱり私か……。




 この場で作り笑顔を浮かべる水野さんと《《私》》。2人は、新たに加わった3人の女の子達と一緒にお家に帰っていく……。

次回『修羅場に立つ者ら』

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