表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/80

五十学期 朝昼晩を制する者

 数日後、私は地元の駅前で1人待っていた。私は、自分の手に持ったスマホをチラチラ見ながら時間とメールのトーク欄を覗いた。そのトーク欄には、水野さんとのやりとりが見える。



 はぁ……12時に駅前集合って言われて来たは良いんだけど……。うーん……。興奮のあまり30分も早く来てしまった。いや、まぁ……本当は1時間前に駅に着く予定だったんだけど……それもこれも……。




 私は、チラッとさっきあった事を思い出した。一時間前、私が家を出て行く時の事だった……。








「……さ~て、今日は水野さんとデートだし! 今度こそこれで気合入れていくわよ!」


 

 私は、元々今日着ていく服を2日前から決めていた。いや、というか……こういう気合を入れて行く時に着ていく服など最初から決まっている。







 ――ドレスだ! この前、皆で遊びに行った時、同じクラスの女の子達は、あの格好を全力で否定してきたが……しかし、デートに行くとなれば話は別だ! 今日は、この前よりももっと綺麗でセクシーなドレスに身を包むとしよう!




 そう思った私が、クローゼットから深紅のドレスを取り出して、着用。しっかりお化粧もして外を出ようとした。



 ドアの前にやって来て、行ってきますと父母に告げる時、またこの前と同じように両親は、しばらく固まっていた。




 リビングで仕事の疲れを癒していた父がヒソヒソ声で母に告げているのが、少し聞こえた。



「……なぁ、母さん……その……言いづらいんだが……僕らの娘は、いつから……その……」



「貴方。言わなくても分かるわ。あれは、完全に新宿歌舞伎町とかにいるキャバ嬢そのものですもの。……あぁ、日和ちゃん……何処で道を間違えちゃったの!」






 母さんよ。昼間にドレス着てるだけで何故そこまで悲しむ……。友達とデート行くだけだよ。ただ気合を入れただけだって……。





 と、まぁそんなこんなで私が家を出て行くと……その時家の前の電柱の裏に隠れるような感じで立っていた見知った顔の女の子達を3人目撃。


「あれ……?」


 ――そこにいたのは、体育祭の前にクラスの子達だけで打ち上げをやった時、一緒にショッピングモールで服を買ったりした女の子3人組。



「えーっと?」


 私と彼女達は、目を合わせてしまう。目を合わせてしまった以上、知らないフリなどできなかった私は、挨拶しようと思ったが、しかし彼女達の名前が出てこなかった。


 すると、そうやって固まっていた私に女の子達のうち真ん中に立っていた1人が、なんだかとても気まずそうに話しかけて来てくれた。



「……えーっと、おっおはよう。日下部さん」



 私も彼女の挨拶を返そうと口を開く。しかし、やはり依然として名前が出てこない……。


「……あっ、あぁ……えーっと……御三方おはよう」



「……いや、絶対アタシらの名前覚えてなかったでしょ?」


 

 真ん中の子が、ツッコミを入れてきた事に私は、ギクッと自分の背中を震わせた。……やっ、やべ……。




「……ばっ、バレた」




「……バレバレだよ!」


 真ん中の子は、そうツッコミを入れると次に軽い溜息をついた後に話し始めた。



「……私ら、入学してもう3か月は経つんだからいい加減覚えてよね。……私は、千昼ちあき


 彼女の後に続いて右の女の子、左の女の子の順番にそれぞれ名乗り出した。


「……私は、渚朝なぎさだよ。よろしく!」



「私は、夜宵やよい。よろしく~」



 ふむふむ。なるほど……。右から順番に朝、昼、夜……。




「なるほど。渚朝ちゃんが私に童貞を殺すセーターを着せてきた子で、千昼ちゃんはよくツッコミを入れてくれる子。そして、夜宵ちゃんはこの中で一番優しそうな顔をした女の子って感じか~」




「……優しそうって何よ! 私達だってちゃんと優しいじゃない!」



「……おぉ、やっぱりちゃんとツッコミを入れてくれるのですね。千昼ちゃん」



「……ぬぐっ」



 と、まぁそんな感じの会話をした後で……ふと、思い出したかのように左に立っていた夜宵ちゃんが話し始めた。



「……そっ、そういえばその! 日下部さんは、これから何をしに行くんですか? そんな格好で……」



「ん? あぁ、実はこれから……水野さんと遊ぶ予定で……」




 と、私が話し出したその時、目の前にいた3人の女の子達がヒソヒソ声で何かを話し始めた。



「……うわぁ、やっぱりだ」



「……思った通りだったね」



「……何とかしないと」





 ん? どうしたのだろうか? 声はよく聞こえなかったが、しかし表情からあまり良い感じには思えない……。もしかして……水野さんだけじゃなくて私達ともデートして欲しかったと……それを素直に言えなくて困っている感じなのか!?




 しかし、しばらくして千昼ちゃんの口から言われた事は、私のそんな真っピンクの妄想とは、真反対の現実だった。




「……日下部さん、もう一度家に戻ろうか。私達ともう一回……服を選び直そう」




「……え?」





 私は、またしても……どうしてなのか分からないが、服を着替える事になってしまった……。

 


次回『着替える者』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ