四十九学期 約束を取り決めた者
中間テストを終えた私達の元に次にやって来た事は、季節の変化。――そう、気づけば今は、もう6月も終わり。梅雨から夏への移り変わりの季節になっていた。それと同時に私達の制服も半袖となり、雨と蒸し暑さのダブルパンチが教室にも押し寄せてきていた。
今まで窓の外をぼんやり眺めていれば見れていた桜の花びらも今となっては、消えてしまっていた。そういえば、いつから全部散り切ってしまったのか……それは、分からないが……今の桜は、薄い桃色から変わって緑色の蒼い葉っぱが茂っていた。
その葉っぱに雨水がポタポタとかかり、みずみずしく雨に当たって、プルプル震える葉を私は、見ていた。
6月は、学生たちにとって退屈な月でもあった。この時期は、比較的何もなく学生生活というものを改めて楽しめる時期でもあった。
まぁ、GW明けてからが異常だっただけな気もするけど……。
私は今日も授業中は、窓の外をたまにぼんやり眺めたりしながら学校を過ごしていた。
休み時間とか休憩時間になると、教室に目を向けて女の子達の足や胸ばっか見ていた。
「……いっ、今! 日下部さんと目があった!」
「ええ! 良いなぁ~」
……たま~に、ああ言う嘘を言う輩が相変わらずクラスの中にいたりするのだが、まぁその子の夢をぶち壊さないように本人の前では絶対に言わないでおくが……私は、目なんぞ絶対に見ない。見るのは、生足と胸、後はケツだ。以上。
……と、まぁ私が1人で物思いにふけっている中、私の席の方まで1人の少女がテクテク歩いて来て、話しかけに来てくれた。
「……日下部さん?」
「ん? どうしたの? 何かあった? 水野さん?」
横を見てみるとそこには、水野さんが立っている。彼女は、いつも通りのカチューシャをつけた青髪で小さい背丈のお人形さんのような見た目をした女の子だった。
その彼女が、なんだかとても楽しそうな様子で話すのだった。なんだろう? 今日の水野さんは、なんだかすっごくテンションが高い気がするが……どうしたのだろう?
「……今度の日曜日って空いていたりします?」
「日曜? ……そうだね。特に予定とか入ってないけど……」
「……でしたら! でしたらでしたら……その……もしよかったら何ですけど……」
今度は、突然モジモジしだした。どうしたんだろう? 今日の水野さんは……いつもより感情表現豊かというか……なんか、変だなぁ……。
喋らないでしばらく彼女が、次に喋り出すまで待ち続けていると、そのうち水野さんは、ようやく口を開いてくれた。
「……今度の日曜日! 一緒に映画でも見に行きませんか!」
……映画かぁ。確かに最近行ってないなぁ。うん……。ちょっと、見てみたいかも。
「……良いよ。じゃあ、他に誰か誘う?」
しかし、その一言に水野さんのテンションは一気に落ちて行ってしまう。彼女は、とても悲しそうな様子でモジモジしながら私から目を逸らしたりしてごにょごにょと小さすぎる声でぶつぶつ何かを言っていた。
「……?」
どうしたのだろう? 何か言いたい事でもあるのだろうか? こういう時、待って上げる事が一番だと私も知っている。だから、私の方からマシンガンの如くベラベラ喋っても向こうにストレスを与えるだけだ。
だから、ひとまず水野さんがちゃんと喋りだすまで待って上げよう。そうすれば、いずれ彼女も自分の気持ちを素直に言ってくれる。
「……その、チケットが2枚しかなくて……元々は、お姉ちゃんと行く予定だったのですけど……お姉ちゃん忙しいみたいで、だから……私と2人で行ってくれませんか!」
そうそう、こういう風に待って上げれば、ちゃんと自分の思っている事もはっきり言ってくれるとっても良い子なんだよね~…………………………ん?
はて? 聞き間違いかな?
「……えと、今なんて?」
「……だっ、だからその………2人で一緒に行きたいなって……」
んぬぬ!? え? 私と? ……それって……。
「……えええええ!」
「……はっ、はまま! 声が大きいですよ。日下部さん……」
いや、そりゃあ……大きい声も出すわ。だって、それって……デートじゃないですか……!
次回『朝昼晩を制する者』




