四十七学期 集合する皆の者達(※1人忘れてた)
――勉強会も終わって私達は、それから各々勉強を続けて行き、ついにテスト本番を迎える事となる。今年度のはじめに受けるテストと言う事もあってか皆、そこそこに緊張はしているみたいで、私がいつものように朝の学校で周りの人達に美しい笑顔で挨拶を振りまいても、いつものように「おはよう」と返してくれる人は少し少なく感じた。
まぁ、普通は皆テストと聞いたら緊張もするだろうし……何より、この最初のうちに成績をある程度稼いでおきたいという思いもあるのだろう。マラソンは、はじめに手を抜いて走ると後になって本気をだそうとしても、全力で走れなくなってしまうと……前世で体育の教師が語っていた。それと一緒で……テストと言うのも皆、始めが肝心と思っているのだろう。
まぁ、完璧たる私には勉強など不用なんだけどね。やらなくても分かるし……。そもそも私、勉強しに行くために学校通ってるわけじゃないし。
あぁ、でもテスト中に周りの女の子をジロジロ眺めたりできないのは……ちょっと悲しいなぁ。50分間何してりゃいいんだろ……。テストなんて10分程度で終わるとして……残りの40分どうするよ。寝るか? いや、それだと流石に私の完璧美少女増が崩れてしまうかもしれない。教室でガッツリ居眠りだけは、絶対にしちゃいけない。だが、だからといってこっそり居眠りかますのもなぁ……。なんか違う。
うーん。……40分間どうするか……。また、テストが始まる前に考えておこう。
そんな事を考えながら私が、校舎の中を目指して歩いていると……後ろから聞き覚えのある人の声が聞こえてくる。
「……日和ちゃ~ん!」
「あ……愛木乃ちゃん。おはよう」
「おはようございます」
今日も絶好調のおっぱいだね! とは、本人の前では言えず、私は勢いで開きかけたその口を必死に閉じて、そのまま喋る言葉を忘れてしまった。すると、そんな所に今度は2人の女の子達が現れる。
「……おはようございましゅ」
「……おはよう」
水野姉妹だ。今日は、姉と妹の両方揃って学校に来たらしい。珍しい。……いつもは、氷会長の方が先に生徒会の仕事かなんかで早めに学校に行ってしまう事から会長とこの時間に会う事自体も珍しいわけだが……。
彼女の様子を見た感じ、流石に今日は生徒会の仕事もないみたいだ。会長の目には、若干クマが出来ており、昨日の夜にかなり頑張って勉強していた事が一目で分かる。きっと、生徒会の仕事で忙しかったんだろう……。そのせいで、納得のいく勉強時間を確保できず、昨日頑張ったんだろう……。
そういえば、水野さんの家で勉強会をした時も氷会長の姿がなかったし……本当にここ一週間の間は大変だったんだろうな……。
そんな事を考えながら私達4人が再び校舎内に向かって歩き出すと、今度は突如グラウンドの真ん中に真っ直ぐとレッドカーペットがさっと敷かれる光景が目に入る。
ふと、見てみると学校の外に一台の黒いリムジンが止まっている。
って、あれは……もしかして…………。そのもしかしてだった。私の予想通りにそのリムジンのドアとか至る所に「金」と書かれており、その一文字だけで誰であるのかがすぐに理解できた。
リムジンのドアが開いて少しすると中から金髪縦ロールの美少女が現れて、彼女が周りにいる某テレビ番組に出てきそうなサングラスをかけたスーツの男達に囲まれながらバッグを貰ったり、靴を履かせてもらったりして……そして、学校へ向かって歩き出した。
「……行ってらっしゃいませ! お嬢様!」
「お嬢様! 中間テスト頑張ってください! 私共一同、お嬢様の事を全力で応援しております!」
「「フレェェェェェェェェェェ! フレェェェェェェェェェェェェェ! おじょぉぉぉぉぉぉぉぉぉさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」
「恥ずかしいからやめてくださいまし!?」
確かに恥ずかしい。私がもしも、貴方だったら学校行く前にぶっ倒れてるよ。
……そんなすげぇインパクトのある登場をかましてきたのは……えーっと、広隆寺さん? あ、違う。氷川神社さん! ……じゃなくて、松本城さんだ! 彼女は、レッドカーペットの上をテクテク歩いて行きながら私達の方に気付き、そっちへ近づいて来ると、とても気まずそうに手を振った。
「……えーっと、おはようございますわ」
「……うん。おはよう……」
何となく気まずい空気になった私達と松本城さんは、そのまま合流する事なく離れて行った。
ちなみにしばらくして、リムジンの方に保健室の先生が走って行って、執事の人達を叱っていた。……やっぱりやり過ぎていたようだ。
……と、まぁ朝からかなり凄い事もあったが、私達はこの後更に凄い光景を目の当たりにするのだった。
「……おっ、おはよう。皆……」
そこには、寝不足どころか……最早寝て無さそうな赤髪の美少女こと火乃鳥先輩が立っていた。彼女はボサボサの髪の毛のまま眠そうな目を擦りながら学校に来ていた。しかも……酒の匂いが一切しないままで……。
って、ちょっ!? えぇ!?
「……酒臭くない!? どうしたんですか? 先輩! いつものビールは? 私、コンビニで買って来ましょうか!? スーパートライ」
「いらないわよ! というか、アンタが買ってきたら犯罪になるでしょうが」
「……でも、お酒飲んでない先輩なんて……しかも、学校にいるだなんて……普段、学校来てなさそうだし……」
「……私の印象、お酒だけなの!? いやまぁ、学校は確かにあんまり来てないけど……」
と、私と火乃鳥先輩が漫才みたいな事をしていると、水野さんの隣を歩いていた会長が喋り出した。
「……昨日まで毎日、ずっと一緒に勉強させてたのよ。しかも、火彩の家に泊まり込みでね」
「え……!?」
会長が……火乃鳥先輩と勉強を……!? しかも泊まり込みって……!
なんて、羨ましいんだ! それって、つまり……会長とお風呂とかお風呂とかお風呂とか入って……くぅぅぅぅ! なんて羨ましいのだ!
と、思っている私の横で水野さんが納得したように告げる。
「……それで、昨日の夜も凄い遅い時間に帰って来てたんだ。心配したんだよぉ~」
と、水野さんの少し姉に甘えた感じの可愛い声。……ぐふふ、お嬢ちゃん……おじさんにももっと甘えてくれていいんだよぉ~。ぐふふ。
すると、今度は火乃鳥先輩が眠い目を擦りながら言った。
「……これ以上、留年はできないからね。アタシも……頑張りたいと思ったのよ」
火乃鳥先輩が凄く凛とした背中を向けて学校に向かって歩きながらそう言っている。物凄くカッコイイ……! 覚悟に満ちている感じは凄いする! けど……
「……先輩、だからって歩きながら寝ちゃうのは良くないですよ……」
ぐかーっと火乃鳥先輩は、まるでミイラにでもなったかのように体だけを動かしながら歩いていた。
――やっぱり、大丈夫かなぁ……この人。
なんて、心配をしながらも……私達は校舎の中に入って行った。そして、とうとう……運命の時間が幕を開けようとしていたのだった……。
次回『中間テストを制する者達』




