四十六学期 すれ違う者達
それから、なんやかんやで時間は過ぎていき、今日の勉強会は終了となった。私と愛木乃ちゃん、紫香楽宮さんの3人は、急いで帰り支度をはじめるのだった。
周りを見渡すと……私以外の人達は、とても疲れた様子で支度をするのにも少し時間がかかっている様子だ。まぁ、集中していた証拠だろう。紫香楽宮さんに至っては、大きく伸びをして深呼吸とかまでしてる。
真面目だなぁ……。今回のテストの範囲なんて……正直、全然全く勉強なんかしていなくともある程度の点数は、誰だってとれる内容だろうに……。
まぁ、私が人生2週目だから余計にこういう風に考えてしまうのだろうけど……。
――と、そんな時だった。特に疲れも溜まっていなかった私が周りを見渡しているとボーっと下を向いたまま全く動かないでいる1人の少女の姿が見えた。
あれ……? 水野さん? どうしたんだろう? なんだか、凄く暗い顔をしているけど……。
少し心配になった私が、彼女に声をかけようと学校用のスクールバッグが置いてある所から立ち上がって、水野さんの元へ話しかけに行くと、彼女は一瞬だけ私と目を合わせた後、やはり動かずに下を向き続けた。
「……どうしたの?」
声をかける私。しかし、水野さんはしばらく黙ったままだった。何も言わずに……彼女は、下を向いたまま静かにしているだけだった。
――どうしたんだろう? 私の存在には、気づいているはずなのに……何も言わないどころか、いや……どうしてだか、凄く何か言いたげな顔をしてる……。どうしたんだろう?
ふと、私の脳裏で何かが思い当たる。……いや、そういえばだけど、さっきトイレに行こうとして階段を下りてきた時に、トイレが分からなかったのと……後は、愛木乃ちゃんの事を色々考えたりしていたので、下でうろうろしていた時に……水野さんと出会った。
そこからどうしてなのか、ずっと……水野さんは雰囲気が暗い。
何かあったのだろうか……? お菓子を選んでいる時に何か嫌な事でもあったのか? それとも……単純に勉強の疲れによるものなのか……。真相は全く分からなかった。
…………結局、私はそれから水野さんに聞く事ができなかった。そして、とうとう帰宅する事になった。
「……それじゃあ皆さん、今日はお疲れ様ですわね。わたくしは、家の前にお迎えが来ておりますので、お先に失礼いたします。それじゃあ」
最初にドアの前から消えて行ったのは、紫香楽宮さんだった。しっかりお嬢様らしくスカートをひょいっと上げて、お辞儀をすると彼女はエレガントに出て行ったのだった。
その後、意外にも愛木乃ちゃんが家から出て行く――。
「……ごっ、ごめんなさい! 私、ちょっとこれから用事があって! お先に失礼しますね!」
愛木乃ちゃんは、逃げるように外へ出て行く……。その姿に私は、何も言えず……ただ後姿を見つめるだけだった。
なんだか、ちょっぴり避けられている感じがするけど……やっぱり私のさっきの話が嫌だったんだろうか……。流石にちょっと説教臭かったよなぁ……。
心の底で反省しつつ、私も靴を履く事にした。すると、そんな私の隣で同じく靴を履く水野さんの姿があった。
「……どうしたの?」
すると、彼女は少し間を開けてから私の方を向いたりせずに靴紐を結び終わると同時に口を開くのだった。
「……ちょっと、コンビニに寄ろうかなと思って」
「……あぁ、そっか。じゃあ、途中まで道一緒だね。一緒に帰ろうか。《《水野さん》》」
「……!?」
――ん? 一瞬だけ水野さんと目が合った気がする。それも、どうしてだか凄く悲し気な顔をしていた気がする……。
「……はい。行きましょう」
そうして、私は水野さんと一緒にコンビニまでの道を一緒に歩く事となったわけだが……。
「……」
「……」
きっ、気まずい……。なんだか、体育祭の前の会ったばっかりの頃に戻ったみたいだ。どうしてだろう……。話す事は、ちょくちょく思いつくんだけど……それを言うのが凄くキツイ……。やっぱり何かあったのだろうか……。
心配が増していく私であったが、しかし……そんな時、水野さんは私に向かって突然ある事を喋り始めるのだった。
「……木浪さんの事、なんて呼んでましたっけ?」
「え……?」
急にどうしたんだ?
「……愛木乃ちゃん。だけど?」
「そうですよねぇ……。”ちゃん”か……。しかも、名前。私だって……そろそろ、言ってくれたって……」
「え……?」
「何でもないです」
よく聞こえなかったが……なんだろう? 怒ってる? 私のせいなのか? うーん……しかし、私が何かをした覚えは……ないな。うん。ない。
「……日下部さんは、木浪さんの事を……どう思っているんですか?」
「え……?」
どうしたんだ? 水野さん……。さっきから愛木乃ちゃんの事ばっかり聞いてきて……。
「友達だけど……」
「本当にですか?」
「うん。いや、それ以外に何?」
私には、本当にそれ以外に何があるのか分からない。そもそも水野さんがどうして、こんなに真剣に質問してくるのかも……私にはよく分からなかった。いやまぁ、エロい目では見るけど……。
すると、しばらくして……水野さんは、私の事をジーっと見つめた後に何かを納得した様子で、今度は私と目を合わせながら返事を返した。
「……いえ。なんでもありません。ありがとうございます! それだけ知れればもう大丈夫です!」
一体、何なんだろう……。完璧美少女の私にさえ、乙女心というのは分からないものだ……。
まぁ、美少女ではあっても乙女ではないしなぁ……。
次回『集合する皆の者達』




