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四十三学期 一休みする者

「……はぁ」


 水着でGOGO作戦(私が今考えた)も呆気なく終わってしまい、完全に勉強へのやる気を失った私は、最早寝るとかそう言う次元を通り越して、虚無状態となってしまい、周りに合わせて一時間何となくペンを動かしながら時間を潰した。



 はぁ……ビキニが恋しい。こんなワンシーズン前に……先行公開で女の子達の水着を拝めただなんて……くっそ。私は、なんて罪深い事を……私が水着に気を取られ過ぎて……勉強どころではなくなってしまったせいで……私のせいで……わっ、私の……くっ! 服というのは、なぜこんなに罪深いものなのだろう。いや、考えてみれば……人が知恵の実を食べたから楽園を追放され……そして、今の私達がある。つまり、言い換えれば……知恵の実を食べて恥ずかしいとかそう言う感情を知っちゃったから私達は、服を着る事が当たり前になった。



 ふむ……。つまり、服を見て罪深いと考える事自体、何もおかしな話じゃない! くっそ! 皆、その罪深い布切れなんて脱ぎ捨てて、もう一度裸になろう! 




 なんて……私が思った所で、そんな事が現実に起きる事などなく……。一時間半の間、私の目の前で制服を着た女の子達がひたすらに勉強しているのだった。そこには、さっきみたいなドキドキも何もなく……ただ、普通に学生が勉強している姿のみが存在するだけだった。



 やがて、少しすると愛木乃ちゃんがペンを置いて喋り出した。



「……そろそろ、休憩しましょう」


 すると、その言葉にネルソンマン寺さんと水野さんが反応し、彼女達もコクリと頷き、皆で休憩のムードになっていった。



 水野さんは、立ち上がって部屋を出て行こうとすると、その直前に座っている皆に言った。



「……お菓子とか持って来ます。後、お茶をもう一杯入れてくるです」



 そう言って彼女が部屋から出て行こうとドアを開けて歩き出そうとすると、その寸前にマン寺が立ち上がって、告げた。



「……あっ、ちょっとお待ちになって! すみません、水野さん……その、とてもはしたない事を聞くようですが……お花を摘みに行きたいのだけれど場所は、何処にありまして?」


「あっ、トイレだったら……階段降りて、右に行けばあります!」



「……感謝いたしますわ」


 こうして、ネルソンと水野さんの2人が部屋からいなくなって……最後に残ったのは、私と……愛木乃ちゃんの2人だけになった。私達は、勉強を終え(といっても私は特に勉強する事もなかったからボーっとしていたのだけれど……)大きく伸びをして、正座をして曲げていた足を大きく伸ばした。



 いやぁ、完璧美少女を演じるってのは、本当に辛い。こういう時、胡坐をかけないんだもん。だって、胡坐なんて書いてみてよ。周りから……



「……ねぇ? 知ってる? 日下部さんって地面に座る時、胡坐かくのよ!」



「……えぇ! やば! 胡坐とかマジあり得ない! きっも~」



「……あり得ないよねぇ~胡坐とか。胡坐かく女とか……将来絶対、酒に飲まれるタイプの女の象徴よねぇ」



「わかるぅ~。マジ、そう言う所からだらしのなさって出るわよねぇ。ウチなんてぇ~、椅子に座る時も常に正座で座るようにしてるしぃ~。この前も彼氏とフレンチ行った時、しっかり正座ぁ~」






 きっ……きっと、こういう風になるに違いない! いくら女の子同士と言えど……私は、絶対に……胡坐だけは……かかない!




 と、そんな事を1人思っている所に愛木乃ちゃんが話しかけてくる。



「……お疲れ様です。日下部さん。ずっと、正座で勉強していて……疲れません?」


 ――ギクッ!?



「……え? あっ、あぁ……別に。全然へっちゃらだよ!」



「……あら。凄いですね。日下部さん、足腰かなりお強いのですね。ちょっと、尊敬してしまいます。私は、長時間正座するのは苦しくて……お恥ずかしながら……胡坐をかいて勉強してました」



「……え? あぁ、確かにそうだったね」



 愛木乃ちゃん、安心してね。……私は、絶対に学校の他の人達に胡坐かいてたなんて噂を広めたりは、しないよ!



 と、1人で謎の誓いを立てていた私だったが、すると少しして愛木乃ちゃんが私の近くへとやって来て、突然隣に座って来たのであった。



「……え?」



 ――どうしたのだろう? 突然、こんな近くにまでやって来て……。




「……愛木乃ちゃん?」


 尋ねてみると、彼女は突然頬を紅くして私に聞いて来た。



「……その、日下部さん的には……私の水着姿は、おかしくありませんでしたか?」



「え……?」



 ――いや、そんなの……答えなんて一択だろう。


「……おかしいどころか、綺麗だったよ。凄く」



 しかし、当の本人の反応は何処か冴えない感じで……あまり元気無さそうに答えるのだった。



「……そうでしたか」



 何か悩みでもあるのだろうか……。そう思った私は、試しに聞いてみる事にした。



「……どうしたの? なんだか、元気がないみたいだけど……」



 すると、愛木乃ちゃんは儚そうに「あはは……」と笑い、それから語り始めるのであった。



「……いえ、その…………さっき、水着を着ようってなった時に……私は、1人だけトイレで着替えをしていたのですが……その時、また思ったのです。私、なんか……また……”あそこ”が、大きくなっているって……」






「……」









 ――ん?

次回『変わりたくない者』

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