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四十一学期 眠る者

「……と、言うわけで、皆でテストに備えて勉強しましょう!」




「「……おお!」」


 私と水野さん、それから愛木乃ちゃんと天満宮さんの4人が、水野さんの家に集まって勉強をする。4人は、学校終わりにそのまま水野さんの家にお邪魔している事もあって全員が制服姿であった。


 いやぁ、女の子と勉強会とか……わくわくするなぁ~。前世じゃ絶対に敵わなかった事……また一つ経験しちゃったよ私。はぁ~、なんだか良い気分だなぁ~。



 私は、そんな事を思いながら幸せな気持ちでいっぱいになり、そしてペンを握って机に置いたノートに向かって勉強を始める! ……とした次の瞬間に、私の意識が一気に遠退いて、そのまま重くなった頭を机にコツンとぶつけて、私は眠りについてしまった。




「……え!? って、ちょっ!? 日下部さん?」


 そんな突然の状況に私の隣に座っていた水野さんが驚いた。彼女は、勉強会が始まって3秒も経っていないのに眠りについてしまった私の事を必死に起こしてくれた。



「……日下部さん! 起きてください!」


「……ふぅぇ~?」



「……起きてください! これから勉強会ですよ!」



「……うにゃぁ~? すやぁ~」



「……だから、寝ないでください!」


 水野さんに必死に起こされて、更には愛木乃ちゃんや北野天満宮さんにまで起こされた私は、それから約10分後に目を覚ますのであった。









          *



「……いやぁ、ごめんね。皆」



「……日下部さん、疲れているのなら今日の勉強会をずらす事だってできましたし、言ってくれれば……」


 とても心配そうに語る水野さんに私は、正直な事を語った。



「……あぁ、いや違くて……私、別に疲れているから寝ちゃうとかそういうのではなくて……その恥ずかしいんだけど……実は、その……《《勉強を始めちゃうと私、どうしても眠りについてしまうの》》」




「「は……?」」


 同じ部屋にいた皆が一斉に声を揃えて言った。いやまぁ、こんな事をいきなり言われても何言ってんだってなるだろうよ。私も……別に最初からこういう体質だったわけじゃない。むしろ、高校に入ってからこうなったんだ。




 きっかけ……というより、こうなってしまった理由は……私自身にある。女に転生した私は、前世でオックスフォードに行けるレベルまで学業を修めた事から全く勉強をしなくなった。いや、しなくても分かるのだ。



 だって、オックスフォードレベルだよ? 私……。世界一の大学にいける位のレベルまで前世で勉強を極めたんだぜ? もう、現世で学ぶ事なんかないやろ。だいたい、学習指導要綱は前世の頃とほとんど変わってないんだし。学校教育2週目ですよ? 激長映画として有名な『ゴッドファーザー』だとか『アラビアのロレンス』だとかっていう映画を一度見終わった後にもう一回見ようってなったら……そりゃあ、二週目は話分かってるし、展開も知ってるから眠くなって……寝ちゃうじゃん。


 それと一緒なのだ。私にとって今やっているこの高校教育とかいうのは、くそ長映画の二週目と何も変わらない。いや、下手したらそれ以下かもしれない。


 前世から合わせて……一体何度、794(泣くよ)うぐいす平安京を聞いた事か……。”俺”が泣きてぇよ!



 そんな事から私は、小学校に入ってすぐに勉強をすると見せかけて両親にバレないように眠るという事を何度も繰り返した。しかし、両親は私がどれだけ眠ろうと毎回テストで100点だけをとって来る事から何の疑いもしなかった。



 そうすると、だ。人間と言うのは……不思議な生き物で、一度そう言う習慣が出来上がると、段々と体もそれの通りに動いてしまう様になるのだ。




 小学校を卒業する頃、私は……なんとペンを持っただけで眠気が襲ってくるようになった。いや、一番酷い時は……ノートを開いただけで、いや……ノートや教科書に触れただけでも……強烈な眠気が襲ってくるようになった。




 中学の時は、それで少し苦労した。ノートを持つだけで眠りについてしまうせいで、教室移動する授業の日は、毎回……誰かにおんぶして貰っていた。いつしか、中学校の中で……”おんぶの日下部”という不名誉極まりない名前をつけられた。




 こう言うのは、普通……眠りの~から始まる二つ名がつくはずなのに……なぜか私に限っては、おんぶの~だった。


 いや、まぁ……それはどうでも良いんだが……。確かに私のこの勉強を始めようとすると眠くなるというのは、厄介かもしれない。


 すると、心配そうな顔をしていた愛木乃ちゃんが、水野さんに話しかける。



「……授業中は、いつも普通そうなのですか?」



「はい。……私が見た感じ普通…………って、いえその別に……授業中もずっと日下部さんの事を見ていて、集中できていないとか……そう言う事では全くなくて……」




 急に早口だな水野さん。でも、まぁ確かに……授業中にも勿論、周りや教師から気づかれないように眠ってはいるが……自習する時ほどの睡魔が襲ってくるわけではない。もうちょっと、軽めだ。正直、頑張れば耐えれる。しかし、自習をする時とか宿題をする時だけは……どうも分からないが、というか分かっているけど強烈な睡魔が襲ってくるって感じだ。




 うーん……。どうしてなのかなぁ。……と、私自身も悩んでいると突如、私の目の前に金髪縦ロールの東大寺さんが現れて、何かを持ってきて告げた。




「……とにかく、私としてもテスト中に眠ってしまわれるのは、困ります。ですから、私としても眠らないようにする術を実践していくしかなさそうですわね」







「……え?」


 なんだか嫌な予感がする……。私、何をされるんだろう……。

次回『試す者達』

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