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四十学期 学ぶ者達

「……というわけで、今回の試験範囲は……教科書のここから……えーっと、ここまで! 勉強して貰おうと思います」



「「……えぇ!」」




「こらこら! 体育祭しっかり頑張れたんだから……ちゃんとやる事! それじゃあ、今日の授業はこれで終わり!」




 チャイムの音が教室中に鳴り響く中、教師は教室から出て行く。生徒達が、それぞれ仲の良い友人達の元へ向かって行き、話し始める中で私は、ぼーっと窓の外の景色を見つめていた。



「はぁ……」


 体育祭を終えて、元の普通の高校生活に戻った私達だったが、そんな私達にもすぐ次の非日常が訪れる。




 この学校は、スケジュールがなかなか詰め込み過ぎって感じのハードな予定が組まれており、一学期はGWの後すぐに体育祭があって、それが終わると今度はすぐに中間テスト。そして、一か月ほど間が空いた後に期末試験をやり、夏休みに入るわけなのだが……いやぁ、テストは別に良いんだけどさ。正直、あんなもんは勉強しなくとも余裕なわけで……。



 いや、けどね……体力的にさ、きつくね? え? だって私、前世も合わせたら精神年齢はもうとっくにアラサー超えてるんだよ。きつくない? これ……。いくら私がノー勉でも余裕ってタチの天才でもさ、これは辛いよ。流石に……。




 そんなこんなで、体育祭の疲れもまだ抜けない私は、ボーっと窓の外の景色を見つめていた。はぁ……どうしよう。結局、体育祭終わって勝ったのに……言う事なんでも聞かせる権限みたいなやつ、使う時間もなかったし……。なんだか、つまんないなぁ……周りは、皆勉強ばっかして。



 と、そんな事を思っていると……ふと、横から水野さんが小動物のようにそそそっと現れて、座っている私を覗き込むような感じで話しかけてきた。


「……ねぇ、日下部さん」



「ん……?」



 振り返って改めて教室を見渡してみると、教室のドアの向こうには、見知った顔の面々が揃っている。



 どうしたんだろう……。でもなんか表情を見る感じまずい事が起きてる感じじゃない。むしろ逆に……ちょっと笑ってる? なんか、そんな感じがする。



 私がドアの向こうに立つ愛木乃ちゃんと目があった次の瞬間に水野さんが「ちょっと来て」と私を手招きして、愛木乃ちゃん達のいる場所へと向かって行った。



 到着すると、廊下には愛木乃ちゃん。そして、その後ろで手を組んだままそっぽを向いている天満宮さんが立っていた。


「……どうしたの?」


 私が尋ねると廊下に立つ愛木乃ちゃんが喋り出す。


「……もうそろそろテストも近いですし、みんなで勉強会でもと思いまして。日下部さんもどうですか?」



「……べっ、勉強……」



 正直、テスト勉強などしなくてもオックスフォードに行けるくらい頭の良い私にはテスト勉強なんぞ不要だ。今日も帰ったら両親に内緒で買い貯めておいたギャルゲーでも消化して、ダラダラ過ごそうかなぁ〜なんて思っていた。




 いや、しかしだ。しかしだね……女の子達と一緒に勉強ができるというのは、“俺”にとって永遠の憧れ。前世では、(ちょこっとだけね!) 太ってたのにガリ勉だなんだと言われ、キモがられたワイも女の子と一緒に勉強ができたらと何度思った事か……。




「……良いよ! 行こう!」


 断る理由などない! さぁ行こう!



「……良かったです。日和ちゃんも来てくれるならテスト対策はバッチリそうですね」


 ニコニコ穏やかそうに笑っている愛木乃ちゃん。




「……ふんっ! 私は別にあなた方に教えるつもりなどなくてよ? ただ、日下部さんの隣で一緒に勉強すれば今回こそ学年一位を勝ち取れると思って一緒に行こうと思っただけですわ」


 いつも通り面倒くさい事言ってる太宰府さん。




「……たっ楽しみですね! うち広いので……ぜっ、ぜひ皆さん! 来て下さい!」



 なんだか楽しそうにはしゃいでいる様子の水野さん。




 こうして、各々思うことはあれど……テストに向けてみんなで協力して勉強会を行う事となったのだった。

次回『眠る者』

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