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二十二学期 更なる秘め事に困惑する者達

 それから一週間の月日が経った。徐々に体育祭準備の時間も多くなってくきて、私達は、体育の時間だけでなく……授業の時間を一部使ったり、体育祭準備の時間が設けられて、そこで体育祭の種目の練習を行ったりするようになった。



 ちょうどさっきも体育の時間を終えて、私達は更衣室で着替えていた。女子更衣室の中は、女達の汗のにおいと……エッチな雰囲気と……むほっ! ちょっと待って! ここって、天国!? ねぇ、やばくない!? だって、目の前にも……女! 後ろも……女! 右も左も……女! 女! 女! ……女!




 やばい! 更衣室好きかも……私、ここに住みたい。どっかに更衣室売ってる不動産屋ないかなぁ……。いやぁ、ぐふふ! 童貞だった頃じゃ考えられないくらい周り素っ裸の女に囲まれて……私ったら……幸せ者だねぇ!




「……あっ、あのぉ…………日下部さん……? どうしたんですか?」



「……ふぇっ!? あっ、あぁ……いやいや大丈夫ですよ!」



 私は、唇の先から出かかっていた自分の唾液をじゅるりと飲んで水野さんに気付かれように口の辺りを手で擦ってふいた。


 いやぁ、あぶねぇ……。気づかれるところだった。ここで私が女の子を見て涎垂らしてるなんて見られたら……それこそ私の完璧美少女としての高校生活は終わりよ!





 ……と、そんな事を考えたりしながら私が水野さんと一緒に着替えをしている時だった。ふと、水野さんが何かを思い出した様子で私に話しかけてきた。



「……そういえば、木浪さんは何処に……。今日の体育は、3組と4組の合同でしたし……同じ更衣室にいるはずなのに……全然見かけないような…………」



 ギクッ!? 私が、一瞬だけ水野さんにギリギリ気づかれない程度に体を震わせる。




 ……水野さん、たまに鋭いんだよなぁ。



「……日下部さん、何か知っていたりします?」




 ぎっ、ぎぎギクッ!?



「……いっ、いえ私は、何も……。もしかしたら、既に着替え終わってるのかもしれないね~」



「……あぁ、なるほど。確かに……。もう着替え終わってるのかもしれませんね」



「……うっ、うん! そうだよ」


 あぁ……まじで鋭い。いやぁ、それにしても危なかった。咄嗟についた嘘とはいえ……バレてしまう所だった。





 実は、私は愛木乃ちゃんが何処にいるのかを知っている。というのも、この学校の中であの子の秘密を知っているのは、私だけだからだ。





 愛木乃ちゃんは、いつも体育の着替えの時間になると更衣室ではなく個室のトイレの中でこっそり着替えを始めるのだ。



 なぜ、そんな事をしているのかというと……それは……そう、そっ、そそそそれは……あの子には乙女にはないものを秘めているからであった。





 そんな乙女の秘め事を持っている愛木乃ちゃん、着替えの時間にもしも……パンティ姿を他の人に見られたりでもしたら……









 パンティからはみ出てしまった愛木乃ちゃんの愛木乃さんが……皆にお披露目パオンしてしまう……!




 その秘密を守るために……愛木乃ちゃんは、着替えの時間になるや否やすぐにトイレへ駆け込んで着替えるのだ。まぁ、そりゃあ……誰かに見られるわけにはいかないしなぁ……。




 そうして、私と水野さんがなんだかんだで……制服に着替え終わった頃、私のスマホの画面が光って、通知音が鳴る。チラッと携帯を見てみるとそこには、一通のメールが届いていた。





「……ん? 愛木乃ちゃん?」


 



 ――ごめんなさい! すぐに2階の一年生の教室の近くのトイレに来てください! 早く!



 どうしたんだろう? 愛木乃ちゃん……。何かあったのかな?




 私は、水野さんに適当な事を言って更衣室を出て行き、すぐに2階の女子トイレへと向かう。




「……愛木乃ちゃん! どうしたの? 何かあった?」



 私が、トイレに入ってすぐ周りに人がいないかを確認してから愛木乃ちゃんに声をかける。そして、ゆっくりと近づいて……愛木乃ちゃんがいるであろう更衣室のドアをノックすると……彼女はゆっくりとドアを開けて、私の事を見るや否や……泣き出しそうな顔でこっちを見てきた。



「……日和、ちゃん……」




「……どうしたの!? 大丈夫? 何かあったの!? 具合悪い? それとも……」



 しかし、愛木乃ちゃんは首を横に振るだけで、全部違うと否定する。じゃあ、一体何なのか……私が恐る恐ると言った感じで彼女に尋ねてみると……愛木乃ちゃんは、今にも泣き出してしまいそうな様子で口を開くのだった。





「……実はね……その…………」




 ――ゴクリ。











「……おっ、おっ……」



「……大きくなってしまったのです」




 ――へ?




 キョトンとしていると私が、まだ何の事なのか理解していないと言う事を察知したのか……愛木乃ちゃんは、とっても恥ずかしそうに頬を赤らめて小さな声で目を逸らしながら言うのだった。





「……だから、その…………だから、私の……私のあそこが……その……前見た時よりも……大きくなってしまっていて……」




「……え?」



 その瞬間に私は、全てを察した。……あぁ、そう言う事か。なるほど。……そりゃあ、泣きたくもなるさなぁ……。










 涙を流しそうになりながらも必死に抑えている愛木乃ちゃん。そして、何とも言えない気まずさを覚えながら無言のままでいる私。





 どうやら、2人の間の秘め事は……またしても……ある意味で、大きなものに膨れ上がってしまったようだ。

次回『危機なる者』

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