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0学期 超越者の末路

 小さい頃から胸への憧れが強かった。いつか……あぁなりたいと強く強く願っていた……。他の女の子達がアイドルになりたいとかケーキ屋さんになりたいとか……美容師になりたいとか……そう言う夢を抱くように私は、自分の夢と希望をいっぱい詰め込んだあの大きな膨らみを手に入れたいと願っていた。


 そのために幼少期から必死に努力を積み重ねた。小さい頃から私は、自分の夢の為に……つまり、育乳のためにこの人生を捧げてきた。バランスの良い食事、夜更かしをしない生活、適度な運動、毎朝牛乳。出来る事は、全てやった。



 なぜ、ここまで私が胸にこだわるのか……その理由は、至ってシンプルだ。それは、自分の前世が……”男”だったからだ。





 信じられない話かもしれないが……自分には、前世の記憶があって……男だったのだ。そう、今はなき股の間に大きな一物が存在した男時代。


 男として生まれた前世の私は、はっきり言って容姿には恵まれなかった。そのせいで、異性からモテる事は当然なく、童貞のまま高校を卒業した。そして、周りが大学生になった年、私も晴れて大学入学を決める事ができたのだ。それも世界一と名高いあの……オックスフォード大学にだ。浪人などする事なく余裕で入る事ができた。



 運動神経と外見が壊滅的に悪かった代わりに元々、勉強だけはズバ抜けてできていた私は、一夜にしてこの世のトップ校に通うエリートに昇進。両親達にも喜ばれた。そして、この時に圧倒的名誉を手にした私は、高校卒業後に突然クラスのマドンナにコクられる。勢いで付き合ってしまった。



 そんな誰がどう考えても人生の絶頂期に差し掛かっていた私は、彼女ができてすぐ日本を発つ事になる。飛行機に乗って英国を目指した私は、自分のこれから先の事をぼんやりと考えていた。


 しかし、今思うと私は本当に愚かな事をしたと思う。この飛行機に乗る前に無理やりにでも彼女と会って、やる事をやっておくべきだった。私は、童貞のまま海を越え……イギリスの地に立とうとしていたのだ。両親とは別れたのに童貞とは、別れられなかったのだ。



 そして、そんな愚かな過ちを犯した私は飛行機に乗ってゆったりとイギリスを目指していたのだが……なんとイギリスへ向かっている途中で飛行機事故に巻き込まれてしまう。




 ――飛行機が不時着する直前、私の脳裏に焼き付いたのは、家族との思い出でも何でもない。そんなくだらぬ走馬灯などどうでもよかった。



 そんな事よりも私の脳裏に強く焼き付いた光景は……。










 ――捨てときゃよかった……。




 以上。そこで私の人生は、終了して視界は真っ暗になり、音はしなくなる。全ての感覚も”無”となった。







 ――あぁ、なるほど。この世界に……天国なんて幻想はなかったんだ。無の世界。無の空間に精神だけが飛ばされたような……。






 私は、その無の空間にいたはずだったのだが、次の瞬間突然視界が眩しく光って、意識がおきだす。そして、気づいた時には……久しぶりに戻って来たこの下界の冷たい空気と誰かのザラザラした掌の感触にびっくりして……泣いていた。



 赤ん坊の姿で……そこで、私は理解したのだ。自分は転生したと。そして、赤ん坊の私は、たまたま触れてしまった自分の股の辺りに衝撃を受ける。






 ――俺の……自慢の…………自慢のエクスカリバーが……ない。






 この日から俺は、《《私》》になった。そして、全てを受け入れた私は心に決めたのだ。……女になったという事。そう、女になったという事はだな……。つまりだ……つまり、胸が……そう胸があるって事だ!




 それなら、俺が……いいや……私がこの新しい命で果たすべき使命は、1つ!












 ――育乳! そう、誰よりもグラマラスなダイナマイトボディーになって、私は……成長したこの肉体を使って……史上最高のマスター○○ションをかますのだ!





 古の時代に大いなる叡智を手にした知識人は、言った……。




「……《《ないなら作れ》》!」






 ――私の前世は、女の子にとにかくモテない人生だった。最後まで童貞を貫いた私が辿り着いた領域……それこそが、この自らが女の子となる事! そう、これは神からの贈り物……女となり、童貞を超える! 最早、捨てる事すらできないこの体……この先の人生の楽しみなど……後は、マスターしかあるまい……。前世だってそうだった……。しかし、女となった今……最早スマホであっち系のサイトとか……そんなの見てマスターするのは、なんだか抵抗がある……。それならば……我が肉体に頼るのみ……。





 ――おかずがないなら……作ればいい! 俺は……童貞を超えるぞ! ジョジョぉぉぉぉぉぉ! 










 こうして、この生誕の日に私は、誓った。……最高の女体を手に入れるのだと……。そのためには……どんな苦しみにも耐え抜いてみせる! 例え、何十年かかろうとも……。

次回『狭間に揺れし者』

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