世界に歓迎される心臓②
ツッコミつつ、向こうにまで声が聞こえているらしいことを知って少し焦る。誓約書だの飛んできただの、彼等に知られてはいけない話だ。
「運命、なんてありえないでしょ。」
「そんなことないってー。」
少し声量を落として否定しても、逆に熱く語りだす友優の声はどんどん大きくなる。落ち着けと言っても聞いちゃくれない。
「絶対に愛美に会えるからってあの白い奴言ってたのにさー。」
「ならいつか会えるんでしょ。もしかしたら外見が変わってて気付いてないだけで、もう会ってるかもしれないじゃん。」
イケ女に文句を言い始めたので一応彼女のフォローをするが耳に届いてないようで、コツコツと指で机を鳴らしている。彼の機嫌が悪い時の癖だ。死んでもそれは変わらないらしい。中身が同じなんだから当たり前か。
「外見変わってたら最悪じゃん。俺、愛美の顔好きだったのに。」
「最低だな。」
「でもなっちゃんはそんな俺が大好きだもんね?」
さも当然だという顔で見つめてくる友優に否定出来ない自分が悔しい。沈黙は肯定だと嬉しそうに笑う彼の追撃が止まらない。
「どうせ他に男も作らないで俺のこと引きずってたんでしょ?」
「そんなことは…。」
「じゃぁなんで本道君と付き合ってないの?彼、気持ち悪いくらいなっちゃんのこと好きじゃん?」
「それは…。」
チラリと視線を向ければバッチリと目が合った。不安そうな顔の優ちゃんは、こんな時まで耳と尻尾が生えているように見える。
「アタシだって彼氏くらいいたわよ。」
「でも結局別れたんでしょ?」
「それはそうだけど、でも、友優のことが忘れられなくて別れたとかじゃないから。」
「俺のことを忘れるために付き合って駄目だったんでしょ?」
図星ばかりで反論出来ない。
「いいじゃーん。愛美はいないんだし、ヨリ戻そ?きっとその為に再会したんだってー。」
「どうせ愛美さんが見つかったら別れるんでしょうが。」
「うん。でも、見た目変わってたらなっちゃんと一緒にいるよ?」
清々しいほどのクズ発言に自分の中の友優像が崩れていく気がした。え?こんなにヤバい奴だったの?こんなクズのことずっと引き摺ってたのアタシ?
毎晩泣き腫らして、無気力な生活送って。生前のアタシ、凄い馬鹿だったんじゃない?
頭痛がしてきて額に当てた手をまた取られて、今度は両手で包まれた。こちらを見つめる顔は真剣で、大好きな人なのに。
「ねぇなっちゃん。俺のこと好きだよね?また付き合おう?」
「………な…。」
「ん?」
「ふっざけんな!!」
ゾワゾワした気持ち悪いものが頭から爪先までいっきに走って思いっきり叫んでしまった。今なら言える気がする。いや、今しかないと思った。
「アンタなんか好きじゃない!アタシが好きなのは優ちゃんだから!運命だっていうなら優ちゃんとがいい!」
「っ、なっちゃん!」
絶叫に皆驚いていたが、いち早く復活した優ちゃんが泣きそうな顔でこちらに駆けてくるのが分かった。それが嬉しくて自分もと席を立った瞬間。
「っっっ!?」
心臓を握り潰されるような痛みに襲われ、耐えきれずブラックアウトした。




