遂にきた②
昔何かの本で読んだ、二人が溺れていたらどちらを助ける?ってのを思い出す。
例えば友優と優ちゃんか溺れていたとして、アタシはどちらを助けるのか。以前ならきっと友優を選んでた。でも今は。
二人共助けられないかとモタモタしている間にどっちも沈んでいくような気がする。それならいっそ、二人が助かって自分が沈んでしまえばいいのに。
◇◆◇
(…雨か)
カーテンの向こうでポツポツと音がする。天気予報は晴れだったはずなんだけど。溜め込んでる洗濯、今日中に乾くかな?
スマホの時刻は6時25分。二度寝する気にもなれなくていつもより少しだけ涼しい廊下を歩いてリビングを目指す。テーブルの上に置きっぱなしになってる二つのスマホを見て、今日こそはと覚悟する。
(買い出しは…まだ大丈夫かな)
冷蔵庫から麦茶を取り出しつつ中を確認して外出の必要が無いと判断。引きこもり決定だ。
休日は朝食をとらないのでそのままソファに沈んでテレビを点ける。現在の雨は突発的なものらしく、お昼頃には止むらしい。
(洗濯はその後でいいか)
ならば午前中はコレか、とスマホに手を伸ばした。まずは今使ってるもの。優ちゃんから少し前に希望時間のメッセージが来ていたので了解とだけ送る。
ひとつ深呼吸して隣のスマホに触れた。幸いなことに充電器が同じだったので電池切れで見れなくなることはない。隅から隅までじっくり思い出を振り返れるわけで。
(よくあの事故で壊れなかったよねぇ)
傷だらけだったから完全に壊れていると思ったのにただの電池切れで、昨夜それが発覚した時は感心した。起動すると夥しい量の通知があった。そのほとんどは家族や友人のもので、日付は事故の日。会社の同僚と駅まで一緒だったから、彼女から会社、会社から家族へと連絡が回ったんだろうな。相当焦って送ったと思われる誤字だらけのメッセージを見て視界がぼやけた。
(あぁ、もう二度と会えないんだ)
しっかり受け入れてたことだと思っていたのに、改めて感じて涙が止まらない。友人からのそれらも自分の無事を願うものばかりで余計溢れた。
(SNSも、よね)
久しく見ていなかったアプリのアイコンを恐る恐るタップすれば、当時の状況を記載した投稿が目に入ってきた。イケ女から受けた説明そのままだ。被害者が多すぎて全員の身元確認が終わるのに相当時間がかかったようだ。ヲタ友からのDMを上から順番に開いていく。次のイベントの話から、返信が来ないことを不思議に思ってそこから立て続けに心配する文が続く。
残念ながらヲタ友はアタシの住所を知らないので事故に巻き込まれたと繋げることは出来なかったようだ。徐々にフェードアウトをしていったみたいで、フォロワーが減っていた。
(死んだら状況なんて説明出来ないしね)
持ち物はこちらに一緒にきているから現場からは発見されなかったのか、それとも同じものが壊れた状態であったのか。
どちらにしても伝えることは無理なんだけど。




