遂にきた①
頑張ると言ったものの、帰宅したアタシは生前のスマホを目の前にして何も出来ないでいる。バッグから取り出しただけでも進歩じゃない?今日はこれでおしまいでいいんじゃない?
どうにか逃げる道を探してるけど、これじゃいつまでも解決しないと自身を奮い立たせて手を伸ばす。
ブブッ
「うわぁ!?」
突然の振動音に文字通りソファから飛び跳ねる。今の、このスマホ?
「あ、普通にこっちだった…。」
通知でピカピカ光ってたのは今の世界のスマホだった。タイミングよろしくない。心臓止まるかと思ったわ。
決死の覚悟を邪魔した奴は誰だと少し恨みながら確認すると、久しぶりの優ちゃんからだった。心臓が今度はギュッとなる。
(あーもうこれは完全に惚れてますよね…)
彩子との会話では濁したけど、連絡一つでこうなってしまうのはもう認めざるを得ない。だって今までの彼氏からのそれによって起こる反応と同じだし。
そうなるとやっぱり過去の清算は必須だ。
『久しぶり』
熊さんが壁からコッソリ顔を覗かせているスタンプと共に送られてきたのはたった一言だった。あの日から彼に関する情報はいっさい入ってきていなかったけど、この感じだとしっかり覚えているようだ。まぁ連絡来なかったのが全てを物語っていたが。
自分も同じ言葉と片手?片足?をあげた猫のスタンプを送る。すぐに既読になったけど、なかなか返信はない。
(んー、完全に見る気分ではなくなったぞ…)
二台のスマホを並べてどうしたものかとソファに沈む。いっそもう寝てしまおうか。別に明日も休みだし、特に予定ないから暇だし。いやいや、こうなった以上さっさとしないとまた逃げて彩子に怒られる未来しか見えない。
やはり確認を、と再び右手を伸ばした所で優ちゃんからの返信が届いた。さっきから邪魔してくるやん。何、嫌がらせ?
『次の土曜にランチしませんか』
夜じゃないんだって思ったけど、ランチ=お酒飲まないから素面=告白のやり直しだと予想してスワイプしようとした指が止まった。来週でしょ?一週間で気持ちにケリつく?
既読スルーに不安になったのか、泣きそうな熊さんスタンプの追撃がきた。
『いいよ』
素っ気なくなったのは許して欲しい。なんとか返したと思えばまたすぐに戻ってくるから気持ちが追いつかないんだけど。
『この前の槙さん?のお店ってランチもやってる?』
『うん、やってるよ』
『じゃぁ其処にしよう』
え、彼処でやり直しすんの?槙君に見られるじゃん。結構な確率で彩子もいるかもじゃん。恥ずかしすぎるんだけど。
『こっち来てもらうの申し訳ないから、アタシがそっち行くよ?』
『いつも来てもらって逆に申し訳ないからさ』
確かに彼がこちらへ来たことはない(以前寝坊したから迎えに来なかったしね)。最もな理由に必死に断るのも告白を意識してるみたいで恥ずかしいから、OKスタンプを送って時間は任せる旨を伝える。同じようにスタンプを返されたので、これで一区切りつけてもいいだろう。
「優ちゃんが運命の人ならいいのにね。」
二つのスマホに願望を伝えたところでどうにかなるわけじゃないけど。




