サヨナラひとつ①
どうにも続きをやる気分になれなくて、切り上げてベッドに潜り込む。
スマホで検索すればネタバレサイトはすぐに出てきた。女性キャラだと先程の展開に、男性キャラだと悪友が彼のポジションになるらしい。その場合好意の対象が主人公になり、一緒にいる自分の分身キャラに敵意を持ち、彼の方は恋人の心変わりを兄のせいにして敵意を向けるようだ。
そしてここがゲームの唯一の恋愛要素だと。いや要らんわ。
(なんであの感情をあの時持ってくれなかったの)
そんな思いがジワジワと心を侵食する。それと同時にざまあみろとも思う。
(アタシに見向きもされない男だったって思うと少しだけスッキリする)
同じアタシじゃないし同じ彼では無いけど。
あの世界で最初から主人公と行動していたら、こうなっていたのだろうか。別に分身キャラがいたけど、この通りになっていたのだろうか。
もう戻れない世界に思いを馳せていれば、次第に瞼が重くなる。ここ数日のような不安感はない。
二度と悪夢は見ないと謎の確信があった。
◆◇◆
「やっほ。スッキリしてんね。」
「うん。だいぶグッスリ寝れたわ。」
翌朝の目覚めは最近の中で1番良く、足取り軽く指定された待ち合わせ場所に向かえば既に彩子はいた。早めに来たのに何故という疑問に心配だったからと返した彼女に嬉しくなる。
「昨日の死にかけとは大違いでウケる。ちゃんと話し合いでも出来たの?」
「それは出来なかったけど、こう、なんだろ?自分の中のモヤモヤが少しだけ無くなった感じ?」
「それは友優君とやらの?」
「いや、夢見悪かった原因の方。」
いつも通り槙君のお店は賑わっている。奥から少しだけ顔を出した彼も彩子から話を聞いていたみたいで心配そうにしていた。申し訳ない。
「まぁいっか。そっちはまた追々。」
かんぱーいとグラスを軽快に鳴らしいっきにあおる。濃い目のハイボールが美味しい。
キッチンは忙しいだろうにわざわざ槙君が料理を運んで来てくれて更にもうしわけない。
「彩子ちゃんが心配するくらいだから相当だったんだろうけど、元気そうで良かったよ。」
そう言ってサービスのポテトサラダを置いて戻っていった彼は流石としか言えない。何故攻略対象じゃないんだこの男は。
「色々聞きたいこともあるけど、とりあえずさ。」
「まぁ話さなきゃなーって事がちょこちょこあるけど、何?」
「カツ丼いつ行く?」
いやそこかい。確かに行く話になってたけどさ。




