彼と彼女とアタシ④
「序盤のモブが敵の幹部なんて普通思わないし、なんなら裏切ってこっちサイドに付くとも思わないよね。」
敵の本拠地に辿り着く前に大きい城門があるのだけど、そこの鍵となっているのがそのキャラなんだよね。あそこから引き返すのは結構大変で、空飛べたらいいのにって何度思ったか。
(このキャラ選択制じゃないから…)
ゴリゴリに強くなった主人公達は勿論条件を軽くクリアしてしまっているので加入が決定だ。戦闘メンバーを入れ替えてもいいけど、折角なのでこのままでいこう。元幹部よ、キミはアイテム欄にある鍵だと思うことにするよ。
「んー、そろそろ夕飯か。」
かつ丼完食後ひたすらゲームしてたけど、闇堕ち疑惑の元彼はまだ出てこない。もう最終ダンジョンに入るし、出るならそこしかないよなぁ。
冷蔵庫からお弁当箱を取り出してレンチンしつつ、ストックのカップラーメンの為にお湯を沸かす。たまには湯船に浸かろうと、浴槽の掃除をしていればあっという間だった。
(ご飯食べながらゲームしててよく母親に怒られたなぁ…)
ズルズルと麺を啜りながら城門までの道のりを進んでいく。そういえば、両親と何年も会わないまま死んでしまったなぁ。仲が悪いわけではないけど必要最低限の会話しかしなかった何とも居心地の悪い家庭だった。弟はまだ実家暮らしをしているんだろうか。
上手く敵とのエンカウントを避けて最短で目的地に到着。ここを通過すると上司の裏切りを知った部下達が慌てふためく姿が見れる。その混乱に乗じてさっさと抜けると、目の前に現れるのが最終ダンジョンの大きなお城。どちらかというと要塞みたいな感じだけど。
(お、お風呂が沸いたから先に入っちゃおう)
軽快なメロディーがお風呂の準備が出来たことを告げる。扉の前でセーブをしてスリープモードに切り替えて充電もしておこう。
周年パーティーのビンゴで当たったバスボムを棚から取り出して湯船に放れば、綺麗な紫色になった。ラベンダーの香りが仄かにする。スマホをお風呂専用スピーカーと繋げてお気に入りの曲を流せば、至福の時間の完成である。
(んあー…気持ち良い…)
いつもより時間をかけて体も髪も洗い浴槽に沈めばほうっと息が漏れた。下から上がってくる香りに肩の力が抜けた気がする。
(…自分で思っているより追い詰められてたのかな)
知らない世界というのもあって気を張っていたっていうのはあるかもしれない。更に運命の人が決まったとなれば、ここが最後の世界だとなれば余計に。
自分はどうするべきなのだろう。
(まずは優ちゃんの告白やり直しの対応…)
いや、今は考えないでおこう。彩子の言う通り、ゆっくり休んで明日からまた頑張る為に。
そうと決まれば好きな事をしよう。就寝時間まで思いっきりゲームしてやる。
プレイリストの最後の曲が終わるタイミングで湯船から体を起こして軽くシャワーで流す。ちょっと良いとこのフワフワなバスタオルは、よく水分を吸収するということで転移初日に買ったものだ。肌触りも抜群である。
(今日中にクリアしよう)
きっと終わる頃には何かが変わってるはず。




