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彼と彼女とアタシ③

帰宅する頃には体の重さなんて全く感じず、鏡で確認した顔はいつも通りだった。病人でも無いわけだし、さてこの時間を何に使おうか。


(話し合ってって…世界が違う相手にどうしろと…)


1つの手段としては良いと思うけどさ。自分の境遇を知らないから仕方ない。言えるわけもないし。

自分と向き合って昇華していくしかないかと憂鬱になった所でインターホンが鳴る。別にデリバリーなんて頼んでないし、荷物が届くなんてこともない。不思議に思ってドアスコープを覗くと、フードデリバリーのお兄さんだった。


「こちらご注文の品でーす。」

「は、はい。ありがとうございます…。」


あざーしたー、と軽快に去っていく彼と手元の食事に混乱。玄関開けっ放し立ちっぱなしもご近所に見られると困るので、とりあえずリビングまで戻ってきてテーブルに置く。

配達先を間違えたんじゃないかと確認しても自宅の住所とアタシの名前。届いたのは駅前のとんかつ屋さんのかつ丼だった。


「いや、ここのかつ丼有名らしいけどさ。」


思わず声に出してツッコミをしてしまうが、かつ丼が答えを教えてくれるわけでもない。

その時どこかで何かが振動している音が響いた。そういえばキッチンにスマホを置きっぱなしだったと飲み物を取りに行くついでにそちらへ向かう。どうやら着信だったようで通知を確認したら彩子。明日のことで何か連絡したかったのかとトーク画面を開いて謝罪を打ち込めば、すぐに返信がきた。


『かつ丼届いた?』


犯人はお前か!とスマホを投げそうになった。確かに彼女には宅飲みの話が出た時に住所を教えていたけど、こんな使い方をされるとは。

というか、お昼ご飯中途半端なの忘れてた。お弁当の残りを何とかしなければ。


『チョイスが謎なんだけど』


かつ丼の写真をパシャリ。一言添えて送信したけど返事は返ってこなった。時間的に仕事再開してるだろうから連絡来る方がおかしいんだけど。

お弁当箱を隣に置いて悩む。これはどちらを先に食べるべきか。


(せっかく彩子が頼んでくれたし…あったかいうちに食べた方が美味しいよね)


すすす…とお弁当箱を右にどかしてお茶のグラスを横にセット。着席して丼の蓋を開ければ、湯気と共に食欲を刺激するいい香り。これは食べるしかない。お弁当の残りは夕飯に回そう。


口コミ通り、とても美味しかった。彩子にお礼をしたら、今度一緒に行こうって。

良い友人を持ったもんだ。

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