【sideY】心配する男
「初めまして。」
「初めまして…。」
俺はなんでこんな所にいるんだろう。いや、誘ったのは自分なんだけど。
「んでぇ?酔った勢いで告った青年よ、どうした?」
「亮君が言ったね!?もう死にたいくらい後悔してるんだから!」
「二人とも落ち着いて。」
彩子さんの後ろに亮君と姉ちゃんが見えた気がした。とても意地悪く笑っている二人が。
俺の告白の後なっちゃんがどんな感じか知りたくて彼女に夕飯のお誘いがてら連絡したら、正面に座る男、槙さんと三人でならと返事が来た。コンビニでなっちゃんと張り込んでいた時に見た顔を思い浮かべて何故とも思ったが、彼女と二人で食事に行った経緯も聞いてみたかったので承諾。
「彩子ちゃんから話は聞いてるよ。那智さんが運命の人なんだって?」
「俺のプライバシー!」
「本人にバレなきゃいいじゃん。あぁ、自分で言っちゃったんだっけ?」
「性格悪い!」
今日は誰も飲んでいないのになんでこんなノリになっているんだ。彩子さんに噛み付く俺を槙さんが宥めてくるので、仕方なく中腰で掴みかかろうとしていた姿勢から椅子に体を預ける。彼女はニヤニヤしたままだ。
「那智は特に何の変化も無いわよ。告白されたことも言ってこないし。最近新しいゲーム買ったとかで、それやるのに仕事終わったらさっさと帰宅してるわ。」
「え、それって意識されてないってこと…?」
ちょっとくらいソワソワしててくれていたらいいなって思っていたのに、通常運転とは。めちゃめちゃショックを受けている俺を見て大爆笑している目の前の顔に右ストレートを入れたい。
「浮気される前提で色々考えてるみたいだったから、もっと軽くでいいんだよとはこの前話したけど。」
「なっちゃんの元彼ってそんなに良い男だったんですか?」
「詳細は知らないけど、俺じゃ幸せにしてやれないとか言ってフッてきたと思ったら浮気してたって話ね。」
なんだそれ。全然良い男じゃないじゃん。
「素面でってチャンスはもらってるんでしょ?」
「そこまで聞いてるのか…。実際もう一回言うにも会えるかも分からないのに。」
「まぁ誘われたら仕切り直しかと思われるのは確実だよな。」
運ばれてきたホッケをつつきながら槙さんが言う。うちの店も和食メニュー入れるかなんて真剣に考え始めてしまったから駄目だこの人。
未だに表情が戻らない彩子さんはスマホいじってるし。俺、相談する相手間違えた?
「よし、このデキる女彩子様が最高のプロポーズの場をセッティングしてあげよう。」
「いや、告白するだけなんですけど。」
どうしよう、不安しかない。




