確定演出が出ない②
「………だいぶ酔ってるね。さっさとお家戻りな?」
「酔ってないもん!好きだもん!」
突然の告白に咄嗟に出た言葉を近所迷惑レベルの声が掻き消す。車の行き来激しいからそこまで響いていないだろうけど、歩行者がゼロなわけでもないのでタイミング良く通った人が訝しげに見ていた。
「分かった分かった。近所迷惑になるから落ち着こう?」
「うぅ…なっちゃん好きだもん…。」
コイツは飲ませすぎてはいけないとこの瞬間心に決めた。
「とりあえず家入りな?」
「うぅ…。」
「そうそう。…そんで、明日以降お酒が抜けてからもう一度ちゃんと言おうね?」
果たして明日起きた優ちゃんが覚えているのか。忘れていた方がお互いに良い気もするけど。
もう一度に納得したのか、トボトボとオートロックを解除して向こう側で小さくなる背中を確認して自分も駅に戻ることにした。
(好き、ねぇ…)
好意を伝えられるのはいくつになっても嬉しいものだけど。
運命の相手がどこかに居ると身構えて自分から誰かに好意を持つなんてことはなかった。待っていても向こうから来るんだろうと受け身にもなっていた。根っこには元彼への未練もある。
今回だって運命の相手が居ると確定はしているけど、自分から動くことなくなんならこのまま出会わなければ別の世界に行けるんじゃ?とも思う。
(でも、優ちゃんがその相手なら…)
いや、彼とは居酒屋が初対面だ。その前にメモ帳に一目惚れの記載がある。時間軸が合わない。
(でも、もしGWに優ちゃんが彼処にいたなら…)
そこまで考えてハッとする。これじゃぁ、優ちゃんが運命の人だと望んでいるみたいじゃないか。
そうじゃないと思考をリセットする為に頭を振る。
(アタシも飲み過ぎてるんだ…早く帰ろう)
しばらくお酒は控えるべきかもしれない。外で飲むのはやめておこう。
いっきに流し込んだ水が冷たくて気持ち良い。空のペットボトルを駅のゴメ箱に捨て、改札を抜ける。発車ベルが鳴り響く中慌てて電車に乗り込めば、同じような酔っぱらいの集団がちらほら。
(運命の人に出会ったら何か分かりやすい合図とかがあればいいのに)
そうすればこうして悩むことないのに。
浮かんだイケ女の顔に心の中で文句を垂れる。そこまで求めないでくださいよって溜息混じりに言われそうだ。
(元彼、元気にしてるのかな)
ポケットから取り出したイヤホンを着けて近くの若者集団の雑音をシャットアウトする。
流れてきた曲は今の気分とは真逆過ぎて舌打ちしたくなった。




