上手くいってると思いたい④
なんでも相談したいことがあるらしい。アタシは何も聞いてないけど。
『それで、お店は任せるって言われちゃったんだけど何処がいいかなって。』
「槙君の方が詳しいと思うけど…。」
『女性受けの良い店はあんまり得意じゃないんだよねぇ…。』
飲食店勤務の人が何を言っているんだか。それに引っ越してきてまだ開拓が出来てないアタシに聞くのは絶対に間違ってると思う。
「石井さんには?」
『アイツと行った店を紹介されそうで嫌だ。というか、事情聞かれるのは気まずい。』
「まぁそれは確かに。」
あの出来事以降槙君も彼と連絡はほとんどしていなかったという。彩子から話は聞いていたので心配だったが、かける言葉が見つからなくて自分からは送れなかったとこの前のご飯の時に言っていた。
「んー。遠くてもいいなら、アタシが前に連れてってもらったお店教えるけど。」
『ほんと?それ何処?』
「〇〇駅の近く。今お店のURL送るね。」
『ありがとう、助かる。』
最初に優ちゃんが連れていってくれたお店を調べてそれをトークにはりつける。確認をしているのか少しだけ沈黙が流れた。
「女性受けが良いかってなると違う気もするけど、料理は美味しかったしお酒の種類も結構あったから彩子は喜ぶと思うよ。」
『みたいだね。口コミもそこそこ良いし。行けない距離ではないからここにするよ。』
ありがとう、と顔を見なくても分かるくらい弾んだ声で槙君に言われた。本当に楽しみなんだろうな。
とりあえず彩子に提案してみると最後に言って通話は終了。すぐにおやすみのスタンプが送られてきたので、同じように返して布団に潜りこんだ。
(いいなぁ…楽しそうで)
相手のことを想ってる時間が楽しいと思えていたのはいつまでだったか。
生前の彼を思い出してみる。距離があると気付くまでは本当に楽しかった。あまり外で遊ぶことが好きではなかった彼とはだいたいお家デートだったけど、一緒にご飯作ったりアニメ見たり凄く楽しかった。一度だけ遠出した先は有名なアウトレットパークで、一目惚れしたネックレスを買ってもらったのは嬉しかったな。
(そういえば、事故の日も付けてたはずなのにイケ女に起こされてからは無かった気がする)
あの日に身に着けていたものは彼女の配慮なのか、衣装部屋にあるあの写真と一緒に小さい鞄に詰められて新しい世界を飛ぶと付いてくる。写真は最初の頃未練がましく部屋に飾ってからは、それ以降部屋に自動的に置かれるようになっていた。それ以外の物に関しては一度確認してからは放置だ。
(今はどこにしまってあったっけ…もう一度確認してみようかな…)
思い出してしまったせいかその存在を確かめたくなったが、睡魔には勝てずそのまま寝落ちしてしまった。




