上手くいってると思いたい③
数コールの後、繋がった向こうはとても騒がしかった。
『もしもし?』
「あ、槙君さっきはごめんね。」
『いいのいいの!それよりごめん!ちょっと今注文が立て続けに入っちゃって。』
「あ!仕事中だったよねごめん!」
『気にしないで。落ち着いたら掛け直す。』
槙君の申し訳なさそうな声と遠くの方でオーダーを読み上げる声に今はまだお店の営業時間だったとハッとする。急いで謝罪して終わりにしたが、彼が謝る必要が全くなくてその場で土下座した。見えてないことは分かっているけど。何故気付かなかったアタシ。ゲームしすぎて馬鹿になってたか。
月曜から繁盛してることは良い事なので、電話は仕事終わりでもいいとメッセージを送ってゲームを再開した。
(やっと揃ったぁぁぁ…これで先に進める…)
再開して10分程でようやく出た素材を街の工房で武器と共に渡す。どの街でも共通の整備士の顔をぼんやり眺めながらこの先の動きをどうしようかと考えた。
さっきまでいたダンジョンは小規模なものなのですぐに抜けられる。次の街に着くまでにもう一つ大きめなダンジョンがあって、その中で新しい仲間候補と会えるのだが。戦闘タイプはともかくスキルは確認しておくべきだろう。スマホでキャラ名を入力して攻略サイトを探す。次の奴は主人公の劣化版か。ならいらないな。
(おらおら進め進めー)
推奨レベルよりだいぶ強くなったアタシ達に怖いものはない。戦闘をオートにしてテンポ良く進むキャラ達に先程とは打って変わって楽しくなる。分岐の左を選択して、右に行くことによって発生するイベントを華麗にスルー。なんなら出口直前のボスも余裕で倒せた。まだレベルにも余裕がありそう。
次の街に到着したところでセーブをして時間を確認すると23時を過ぎていた。キリも良いしここまでかと電源を落として充電器に繋ぐ。
槙君のお店はまだまだ忙しいだろう。今日は電話は来ないかもしれない。しかし待つと送ってしまったので寝るわけにはいかない。
閉店って何時だっけとスマホで検索をかけていると急に着信画面に変わってビックリしてしまった。タイミング良く槙君からだ。
「もしもし。」
『もしもし。さっきはごめんね。』
「アタシこそごめん。仕事中なの完全に忘れてた。」
『いいのいいの。月曜は結構暇だからいいかなって思って掛けたんだけど急にお客さんいっぱいで…。』
その中にはなんと石井さんもいたらしい。いつの間にか一人で来て端っこで飲んでたから気付くのに時間がかかったと笑い声が聞こえた。
「それで、彩子とご飯行くことになったんだよね?」
『そうそう。開店前に連絡があってさ。週末は稼ぎたいところだけど、彩子ちゃんからのお誘いだからね。』
「二人?」
『二人。』
それは休まないとだな。




