上手くいってると思いたい①
「へぇぇ、ほーん、ふーん?」
「何その反応。」
翌日。
出社したアタシの耳にあるソレを目ざとく見つけた彩子に昨日の話をしたらとてもニヤニヤされた。自分もイケメンにプレゼントされたいわーとか言っているけど、彩子なら貢がれていてもおかしくないんだが。
槙君に何かプレゼントさせるかと考えていると後ろのデスクでの女性社員達の噂話が耳に届いた。
「狩野さん、退職したらしいじゃん?」
「えぇ?私、解雇されたって聞いたよ?」
「………。」
アタシの隣にいる彩子も勿論聞いているわけで、反応を見たが無表情。
「石井さんもすっかり元に戻ったよねぇ。」
「ご飯誘ったら行ってくれたりしないかなぁ。」
「無理でしょ。この前も一人撃沈してたし。」
あ、眉間に皺が出来た。どうやら石井さんに関しては思うところがあるらしい。
それにしても。狩野さんは消えたのだろうか。その場合この世界はヒロイン不在の状態で続くのか。正規のヒロインが姿形を変えてこの会社にやってくるのか。
ストーリーがどういうものか分からないけど、攻略対象となっている男性達の扱いもどうなるんだろう。
「那智、そろそろ。」
「え?あぁ、うん。」
遠くの方にいっていた意識が彩子の言葉で戻される。フロアに始業のチャイムが響いていて、急いで仕事道具を広げた。
◇◆◇
(気になって来てしまった…)
定時であがった彩子を少し恨めしく思いながら30分残業をし、まだ明るい空の下小走りに先週のカフェへ向かう。店内に入ってすぐにカウンターを見れば今日もあのイケメンは出勤していた。もう一人の彼はいないらしい。
今日から始まった期間限定のドリンクを注文し受け取り待ちをしていると、手元のスマホの通知が。確認するとほとんど使わないメールで差出人にも見覚えはない。お店のDMはだいたいこのメールアドレスを登録しているから、そのどれかの系列店からかな。
(…おぅ…なるほど…)
なんとイケ女からだった。彼女とのやり取りは転生前だけで一度もなかったのに。
内容は狩野さんのことで、やはり存在ごと消えてしまったらしい。近々本来のヒロインを戻すそうなので、ここからのストーリーに干渉しないようにとのこと。
だからこの世界のこと何も分からないんだってば。
(あ、返信は出来ないんだ)
折角の機会だ、それも含め質問でもしてやろうとメールを作成しようと思ったのに、何度画面を確認しても返信するの文字が見当たらない。ただの報告だけだったのか。イケメン達のことは何も書かれていなかったけど、ここから彼等のうちの一人と結ばれるとしたらこの店のイケメンは候補から外れるのだろう。
(石井さんも無いかなぁ?でも、傷心なところを慰めてって展開は有りか…)
どっちにしろ、自分に被害が無ければなんだっていい。




