おやすみ、明日ね。
「もしもし?」
『なっちゃんなんで他の男とご飯行ってるの!?』
「えぇ?なんでって、誘われたから?」
『俺だって行きたいのにー!』
開口一番何を言い出すんだこの子は。束縛激しい恋人か。
歩きながら喋るわけにもいかず、改札横の柱に寄りかかって優ちゃんの言葉に耳を傾ける。確かに声聞きたいかなぁとは思ってたから嬉しいけど、この状態の彼と話すのはどうなんだ。もしかして彩子のペースに合わせて飲み過ぎた?
「アタシは基本いつでも暇だから、優ちゃんの予定が分かったらすぐ教えてよ。」
『じゃぁ今から!』
「アホか。」
もう21時なんだぞ。今から待ち合わせしたら22時近くになるだろうし、そもそもまだあの二人と飲んでるんでしょうが。
そう思いながらも電車の時間を確認しているあたり、自分は優ちゃんに甘いらしい。懐いてるワンコを可愛がる感じ。
『だって、なっちゃんに会えないの寂しい…。』
「うっ…。」
垂れた耳と尻尾を付けた彼の姿が容易に想像できるような声色にとても罪悪感。
「分かった分かった!今日は流石に無理だけど、明日一緒にランチしよう?何か予定はある?」
『…ない。お昼ご飯だけじゃ嫌だ。』
「…あー、そういえば、新しい服見に行きたかったんだよなぁ…。」
『行こう!そんで、ご飯も食べよう!』
わーいデートだー!なんて先程とは打って変わってテンションの高い優ちゃん。どうにも嵌められた感がするが仕方ない。明日は一日ゲームしようと思ってたんだけど。
そしてデートではないから。ただのお出かけだから。
『11時に最寄りまで迎えに行ってもいい?』
「いや、それは申し訳ないから。」
『俺がそうしたいからいいの!』
「…じゃぁお願いします。」
またしょんぼりされるのも厄介なので大人しく従っておこう。
頭の中で明日の予定を組み直し始めていると、遠くの方で船橋さんの声が聞こえた気がした。戻りが遅い優ちゃんを心配して探しに来たんだろう。彩子はお酒飲んでいたくて動かなかったに違いない。
『あ、亮君来ちゃった。』
「そろそろ戻りな?あんまり飲み過ぎて明日起きられないなんてことないようにね。」
『うん!』
彩子が居る時点で飲み過ぎるのは確定な気もするけど一応忠告しておく。元気な返答ありがとう。フラグだなんて思ってないから。
『じゃぁ切るね!』
「うん、楽しんでおいで。」
『ありがと!あ!』
「ん?」
終話ボタンを押そうと耳からスマホを話したところで引き戻された。
『明日楽しみにしてる。おやすみ。』
「っ、うん。アタシも。おやすみ。」




