内緒話③
「わ、意外とボリュームありますね。結構頼んじゃいましたけど、大丈夫かな…。」
「俺が食べるから気にせず好きなだけ食べてくれていいよ。」
開店直後だったのかほとんどお客がいない店内は、槙さんの所と似てオシャレだった。文字だけで美味しそうな料理を二人で吟味して決めたが品数はそこそこ多くなってしまう。すぐに出てきたアラカルトの量に完食する自信がなくなってきた。でも美味しい。
「なんで今日はアタシとだったんですか?石井さんとか彩子でも良かったんじゃ?」
「卓斗は職場でやらかしたんだろ?アイツが本当にごめんね。」
「まぁ…ちょっと迷惑でしたけど、彩子が助けてくれたし、あれ以降は特に接触もないので。」
狩野さんと不本意なお茶をした翌日にコッソリ総務課に行ったけど、噂通り黙々と仕事をしていた。黙ってればイケメンなのに残念。隅のデスクで必死に仕事をしている狩野さんも確認出来て、すぐには消えなそうかなとも思った。
「もしかして、その謝罪の為にわざわざ?」
「いや、その、ちょっと相談があって…。」
大きい体を縮こませて自信無さそうな彼はだいぶ悩んでいるらしい。でもそれこそアタシより付き合いの長い二人の方が適任だと思うけど。
「彩子ちゃん、もしかして新しい彼氏できた…?」
「いや、この前ご飯に行っただけでまだ彼氏ではないですけど。」
おや、これは。
「もしかして槙さん…。」
「まぁ、うん…。卓斗の彼女だったから諦めようとはずっと思ってたんだけど。」
「破局したからチャンスだと動こうとしたら、本人の行動の方が早かったと…。」
これは二人には話せない内容だわな。そんで、槙さんの人間関係の中で二人と一番接点があるのは恐らくアタシだ。必然的に相談先は決まる。
しかし、槙さんが彩子を…。
「この前、彩子にアタシをオススメされた時だいぶ凹んだんじゃ?」
「あれはかなりしんどかった。」
視線をパスタに注いでいた槙さんがこちらを見て表情を歪めた。好意を抱いている相手に違う人間推されればそりゃそうだろう。酔っていたとはいえ、いや酔っていたからまだ良かったのか。素面で言われていたらもっとショックを受けそうだ。
「アタシは槙さんのこと応援しますよ。」
「ホントに!?」
「わぁ、零れる。」
嬉しさのあまりこちらに前のめりになった槙さんがテーブルを揺らしてしまい、まだ結構残っているお酒がグラスから零れそうになる。注意しようと思ったけど、一転してしょんぼりしている彼にその気力が削がれた。
なんかワンコみたいで。ちょっとだけ優ちゃんを思い出した。




