人生が終わったようだ⑤
「条件とは?」
「まず、最初はどんな世界にしろ必ず胎児からスタートします。そして、成人するまでは飛ぶことはできません。」
イケ女はそう言って目の前に紙をスライドさせた。一番上に誓約書と書かれている。
確かに一番最初は産まれることから始めないと転生ではなく転移になっちゃうか。年齢制限は少し面倒だけど、学園ものの世界なら成人前はストーリーがしっかりあって飽きることはないだろうから許容範囲としよう。
「世界を渡った後の年齢はご自身で決めていただいて構いません。…それと、貴女が故意にその世界の流れを変えることを禁止します。」
「ストーリー改変しないで傍観者でいろと?」
「はい。貴女という異分子が加わることで何かしらの変化があることは必至ですが、それは致し方ないと諦めます。」
ということは、生存ルートは自然発生しない限りあり得ないわけか。その世界の主要人物に関わるなと言われていないだけいいけど。年齢もこっちで設定できるなら推しを至近距離で拝める可能性もあるわけだからありがたい。
「最後に…。これから貴女が飛ぶ世界で【貴女を本当に愛してくれる存在】が発見されたら、その時点でその世界が最後になります。」
「飛べなくなるってことですか。」
「そうです。」
「そんな存在見つけられるとは思えませんけど。」
「貴女が見つけるのではありません。それを判断するのは世界そのものです。貴女が次に飛ぶと決心する前に世界がその存在を確認したら飛べなくなります。そうなったら大人しくその人物を待ちながら生活してください。」
世界判断ってすごいシステムだな。その存在がアタシの好みじゃなかったらどうするんだろう。結局一人で死ぬまで生活することになると思うんだけど。
そもそも本当に愛してくれるなんて。
「死ぬまで一緒にいてくれなきゃ意味ないじゃないですか。」
「大丈夫ですよ。それも考慮してちゃんと判断してくれるんで。」
貴女と同じくらい重い愛をもらえますよ、ってイケ女が自信持って言うけど、何を根拠に。
条件はそれで全部のようで、誓約書の横にペンもどきを置かれた。今言われた内容と同じことが書かれていて、一番下には署名欄がある。
出された条件も最初以外は緩いし、これはもう名前を書くしかない。
手に取ったペンもどきはとても書きやすかった。