ありがちな余計な一言③
「那智!大丈夫!?」
ぐわんと視界が歪む勢いでアタシを引っ張って背中に隠してくれたのは彩子だった。かけられた声に大丈夫と返すと彼女はまず石井さんに視線を合わせた。
「貴方の都合で大事な友人を巻き込まないでください。」
「彩子のことを彼女に相談してただけだよ。」
「それが迷惑なんです。」
怒気を含んだ声にたじろぎながらも弁明する石井さんの顔色がだんだんと悪くなってくる。狩野さんは舌打ちをしていた。邪魔者が増えたでも思っているに違いない。
そこから二人は周りの目も気にせず口論を続けた。さっさと食事会が始まってくれれば終わりになるんだろうけど、早い時間に受付してしまっていてその気配はない。上司に助けを求めようとそちらを見ると楽しそうにしていた。まぁ交際当初から噂になってた二人だし気になるのは分かるけど、そこは上の人間としてなんとかしてほしい。
「もう石井さんと復縁する気はありません。あっちが駄目ならこっちにっていう考えはやめてください。那智にも必要最低限以外関わらないでください。」
どう諫めるべきか思考を巡らせることを諦めようとしたところで一区切りついたらしい。彩子の勝利で幕が閉じそうだ。明日から石井さんは大変だろうなぁ。
攻略対象キャラなわけだし、きっとそういう補正がかかってしまっていたのもあるだろう。彼が100%悪いと言えないと思うのは自分だけなので口には出せない。
「それと、狩野さん。」
「ぅえ?」
「石井さんの次はその彼ですか?それとも、会社向かいのカフェの店員さんですか?あぁ、もしかして取引先の担当者?」
「え?」
次に矛先を向けられた狩野さんは彩子の言葉に顔が真っ青になった。俺関係ないと大人しくしていた隣の男性は、急に自分が話題にあがったことで驚いていたけど、意味を理解したのか責めるような視線を狩野さんに向けていた。
今出てきた人達は全員攻略対象キャラなのだろう。この世界には逆ハーエンドがあったのか、石井さんの攻略に失敗したから他のキャラを同時進行にしてその中から選ぶつもりだったのか。
今この瞬間、更に一つのルートが潰れたけど。
「おいさくら、どういうこと?」
「違うの!田沼さんが勘違いしてるだけ!」
言い合いを始めた二人に満足したのか、彩子はアタシの手を引いてその場を後にした。石井さんはアタシ達を見るだけで微動だにしなかった。
上司達の所に戻って謝罪をすると、面白かったからヨシ!と言われた。性格悪い。
その後は何事もなく食事会が始まり、口コミ通りの美味しいご飯をひたすら胃袋におさめた。
ちなみに彩子に狩野さんの情報をどこで手に入れたのか聞くと、
「いつか使えると思って調査会社に頼んでた。」
とのこと。
お金の無駄遣いだと思ったけど、それで助けられたのもあるのでお口チャックした。




