ありがちな余計な一言②
「お疲れ様、那智さん。」
「お疲れ様です…ありがとうございます、石井さん。」
アタシの体を支えてくれている石井さんは狩野さんの手も外してくれた。怪我もなくしっかり立てることに感謝をしつつ挨拶をすれば爽やかな笑顔を返された。
「いつもと雰囲気が違って素敵だね。」
「いつもと言うほど会ってないですよねアタシ達。石井さんは相変わらずですね。」
誤解を生みかねない発言はやめてほしい。槙さんの所で飲んでから一度も遭遇していないんだから。
猫を被っている彼に嫌味っぽく返したけど、その表情が崩れることはなかった。ちくしょう。
「い、石井さんお疲れ様です。作業は終わったんですね。」
「お疲れ様です。はい、貴女がミスしていた所は全て修正しておきました。」
残ってた作業ってお前のミスの後始末かい、とツッコまなかったアタシを誰か褒めて。しかし石井さん、こちらも噂通り昔のように仕事出来る人間に戻ったようで。狩野さんへの態度がそっけないのも聞いていた通りだな。
ちらり、と高い位置にある彼の顔を見る。その瞳に、最初に見た彼女への熱は含まれていなかった。
「…ありがとうございます。それにしても!いつの間にお二人は仲良くなったんですか?」
自分も杉浦さんと仲良くなりたーいなんて、探るような視線を向けられてげんなりする。どこをどう見たら仲良しだと思うんだ。
狩野さんが大きい声で話すもんだから周りも気になってこちらを見てきている。誰あれな視線が増えるのと同時に、石井さんとの距離が近いことで嫌な顔をする人もチラホラ。
「たまたま休憩室で会ってお話させてもらっただけですよ。」
「そこからお友達になったんですよね?」
お腹に力を入れて遠くまで聞こえるように声を出したのに、更に余計な一言をぶっ込んでくる隣の男を全力で殴りたい。誰かアタシの釘バットを持ってきてくれ。
流石にマズイと感じ取った彩子が近寄ってくるのが見える。もっと早く来てほしかったかなぁ。
「なんでライバルキャラでもない女が攻略対象相手にでしゃばってんのよ…!」
アタシから手を外された距離のままだった狩野さんから低い声が聞こえてくる。
なるほど、彩子がライバルキャラで登場する乙女ゲームなのね。そんで、石井さんは攻略対象のイケメンと。ならば、彼女の隣の男にもそうなのかな。
だいたいこういうキャラって自滅するよね。なんで口に出しちゃうんだろう。




