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ありがちな余計な一言①

船橋さんと尾行した日から彩子と例の男性はなかなか良い感じなようで、週1ペースでお出掛けしてるらしい。酒癖の悪さを披露しないで頑張ってるのかと思いきや、初日に暴露していたようで既にガッツリ飲みにも行ったとのこと。

あの姿を見ても関係が続いてるなら確かに良い感じだと、船橋さんから聞いて安心した。ちなみに報告と一緒にたまに優ちゃんの写真が送られてくる。話に聞いていた猫ちゃんとのツーショットは可愛かった。猫ちゃんが。


「那智、そろそろ時間。」

「待って。優ちゃんに連絡だけ返す。」


化粧室の鏡を占領していた彩子が戻ってきて声を掛けてくる。いつもよりキラキラしてるのは今日が周年記念のパーティーだからだろう。

アタシが最初に訪れたショッピングモールの最寄り駅直結のそこそこ有名なホテルの会場は、ホームページを見た限りめちゃめちゃ豪華だったし料理も美味しそうだった。口コミもほとんど良いことしか書かれてなかったので期待しかない。


「船橋君の義弟さんか。あのワンコみたいの。」

「認識が一緒なのウケる。」


頭の中で耳と尻尾が生えた優ちゃんが、笑顔でこちらに駆け寄ってくる。違和感が無いのがなんとも言えない。


「またご飯行こうってなってからなかなか予定が合わなくてねぇ…。最近は船橋さんと彩子を尾行した日の話をずっとしてる。」

「…懐かれてるのね、那智。」


世間話で船橋さんが話したのだろう、あの日から少し経って着信があった。詳細を聞かれめちゃめちゃ悔しそうな声でずるいと言われたけど、どちらに対してだったのか。


「さぁて、受付しないとねぇ。」


彩子の視線の先にはうちの部署の人達が集まっていた。部署毎に受付する決まりはないはずだけど。

上司がアタシ達に気付いたようで、小さく手招きしている。素直にそちらへ向かえば、まとめて受付を済ましてくれた。本当に良い人達なんだよね。生前正社員で仕事してた会社と大違い。


「あっ!杉浦さん、お疲れ様です!」

「え?…あぁ、狩野さんもお疲れ様です。」


会場に入ってすぐに声を掛けてきたのは厄介な人物だった。以前見た時より濃いめのメイクに、少しきつめの香水が本当にこの世界のヒロインなのかと疑問を持たせる。隣にいる男性は石井さんではない。


「今日は石井さんと一緒ではないんですね。」

「へ?あ、石井さんは少し作業が残ってて後から来るんです。」


少し引き攣った笑顔でアタシの質問に答えてくれる彼女。最近石井さんに避けられているのは噂になっているから気まずいのだろう。彼から連絡がくることがなくても、彼女のことに関しては社内の女性達が常に気にしているから何もしていなくても勝手に情報が手に入る。


「じゃぁ、アタシは田沼さんの所に戻るので、これで。」

「あっ、ちょっと待って…!」

「は?うわっ。」


アタシが狩野さんに声を掛けられたのを視界に入れた瞬間に距離を取った彩子を恨めしく思いながら、そちらへ向かおうと踵を返す。しかし、それを阻止しようとした彼女に腕を掴まれてバランスを崩す。

パーティーだからと普段履かないヒールの高い靴にしなきゃよかったと足を捻る覚悟でいると、傾いたアタシをキャッチしてくれた人がいた。


「那智さん、大丈夫?」


これは修羅場になりそうだと、げんなりしたアタシに気付いたのは遠くで目を丸くしてた彩子だけかもしれない。


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