バレバレなんだよなぁ①
最悪のランチタイムから戻ったアタシを彩子が驚いた顔で迎えた。かなり不機嫌なオーラを纏っていたようだ。詳しいことは聞かれなかったのでそのままデスクに突っ伏すと、横から休憩に行くという彼女の声が聞こえた。あの女達はまだいるだろうし一緒に休憩室に向かっているのも見ていただろうから、向こうに事情聴取でもなんでもしてくれ。
午後の仕事開始時に気まずそうな視線をいくつか感じたが、全部無視してやった。
◇◆◇
「お疲れ様でしたー。」
定時になった瞬間に立ち上がる彩子を横目に自分も片付けを始める。結局彼女には何も聞かれなかったのでこちらも話さなかったけど、今はそれが逆にありがたい。思い出してまたむかむかするのは嫌だから。
先程の女達がこちらに向かってくるのが見えたので、上司に挨拶をして自分もさっさと退勤する。今日の夕飯はハンバーグにしようか。挽肉に八つ当たりするわけではないけど、こう、何か、ね。りんごを片手で握り潰せたらいいんだけど、今のアタシじゃ無理だ。
駅までの道をそんなことを考えながら歩いていると、見たことのある後ろ姿を発見。時間的にはまだ仕事のはずなんだけど。
「船橋さん?」
「うわっ!?すいません!…って、杉浦さん!?」
「はい、杉浦です。こんな所で何してるんですか?まだ仕事では?」
「いやぁ…ちょっとねぇ…。そうだ、杉浦さん、一緒に来てくれない?」
コソコソしててめちゃめちゃ怪しい船橋さんに声を掛けたら、物凄い声量で驚かれた。もにょもにょしている彼に誘われる意味が分からないという顔をすれば控えめにある一点を指した。
そこには一組の男女。
「中間の駅で待ち合わせてご飯するって話聞いててさ。今日の現場がゲリラ豪雨のせいで作業出来なくなっちゃって早く終わったんだよ。だからその、気になって…。」
「後をつけてきたら何故かここまで来たと。」
「そんな感じです…。」
先日の飲みで優ちゃんが彼の素晴らしさを語っていた気がするが、どれ一つ当て嵌まっていないような。早く終わったならさっさと帰宅して奥さん達と団欒すればいいのに。
そして一緒に来て欲しいとは、十中八九彩子達の尾行なわけで。
ちらりと少し先にある背中を見る。
「あの、船橋さん。」
「なんだい?」
「多分、さっきの大声で彩子にはバレてると思います…。」
ほら、恐ろしい顔で振り返ってるし。完全に目が合ってるし。
あの、ヒエッと悲鳴を上げてアタシの後ろに隠れないでください。




