人生が終わったようだ④
どれくらい泣いていたのか。そもそもこの空間に時間の概念があるのか分からないけど。
冷やす為のタオルなどがあるわけでもないので、目を真っ赤にして酷く不細工であろう顔を机から離してイケ女を視線を合わせる。
「…落ち着きました?」
「っまぁ…。」
鼻がズビズビもしているが、其処はスルーするらしい。
「残念ながらこのまま消えるという選択は用意できません。ただでさえ多くの命を奪ってしまったのに、本人の希望とはいえ魂を消すなんて上司に怒られてしまいます。」
「それは自業自得…。」
「これ以上怒られたくはないんです。私を助けると思ってお願いします。」
神様に頭を下げられるなんて貴重な経験なんじゃない?って彼女の旋毛を見ながら思う。まぁ、どんな人(?)でも怒られるのは嫌だろうけどさ。
でも、例えばどんな世界であれ転生したとして。記憶を持ったままじゃ元彼のことを忘れない自信しかないから、今までと同じ生活を送ることになると思う。もし吹っ切れたとしても、また浮気されることを考えて新しい恋愛なんて出来なくて寂しく一人で生活することになりそうで嫌だ。
「………。」
「大丈夫ですか…?」
「…あの。転生するんで、条件飲んでもらってもいいですか?」
消えることを選択肢から除くと、目の前の顔が輝いた。どんだけ怒られるの嫌なんだ。それも同時に口にした条件という言葉に難しい顔になったけど。
「一つの世界に留まるのも同じ生活の繰り返しになりそうなんで、自分の意思で別の世界へ飛べるようにしてください。」
「…は?」
「色んな世界を体験すれば厭きることがなさそうだし、余計なこと考えずに生活できるかなって。」
とんでもないことを言っている自覚はある。でもこれくらいしか思いつかない。
「いくつもの世界を渡るなんて、神と同じ立場となると?」
「いや、そんな大層なもんじゃないんですけど…。死ぬ前みたいな生活が駄目なのは分かっているんです。でも、慣れたら絶対元彼のこと思い出して繰り返しそうで…。」
「重すぎる愛は厄介ですね。」
深い溜息をついてイケ女は写真をしまい、別のバインダーを取り出した。どこから出したかは分からないけど、そこは神様クオリティだろう。同じく取り出したペンみたいなもので何やら書いている。放置されたアタシは、この希望が通った場合にどの作品に飛んでやろうか考えていた。
「…上司に確認を取りました。貴女の願い叶えましょう。」
「え、まじですか。」
「ただし、こちらも条件を出します。」
まぁ全て上手くいくわけはないか。