どの世界にもいるよね①
「おはよう那智。」
「おはよう彩子。」
週明けはどうにも頭が働かない。自分のデスクで突っ伏していると出勤してきた彩子が声を掛けてきた。頭を上げて挨拶を返したが、彼女の恰好に変な声が出そうになる。
「ぁ、彩子、今日は随分と気合が入っているね…?」
「一昨日亮君にイケメンとのご飯セッティングしてもらったのよ!写真見せてもらったけど、文句無しだったわ。」
普段はシンプルに品良くまとまっている彼女が、今日は珍しく可愛らしいワンピースだ。それでも品の良さは変わらずだが、口を開けば残念さが少々目立つ。
興奮気味にスマホに写る男性の顔を見せてきた。確かに石井さんに負けず劣らずのイケメンだが…。この人も攻略対象(仮)なんじゃ?そんなこと言えないけど。
「確かにイケメンだけど…。」
「でしょ!?この健康的な日焼けいいよね!亮君と同業なんだってさ。」
「まぁ病的な白さよりは…。」
テンション高く語ってくる彩子に引きつつ賛同すれば更にヒートアップしてしまった。出社してきた他の女性社員達が興味津々で加わってきたのもいけない。これは早々に噂になって石井さんの耳に入るかも。鬼メッセきそうで怖い。
「んー、意外と槙さん良いと思うけどどうなの?」
「槙さんはなんていうか、良い人すぎて申し訳なくなる。」
気まずそうに答える彼女に、石井さんと付き合っていた頃から迷惑かけてるんだろうなぁと、今頃ランチの仕込みをしているだろう彼に同情した。いつ傘返しにいこう。
◇◆◇
「杉浦さん、ここの項目なんだけど、担当のチェックが入ってないから確認してもらっていい?まだお昼休憩には行ってないはずだから。」
「分かりました。」
そろそろ休憩に入ろうかと思っていたら、抜けがあったらしい書類をお願いされてしまった。目を通してみたら口頭で伝えられるものだったので、内線で担当者をお願いする。ぶっちゃけ電話嫌いなんだよね。特に仕事の。そうも言っていられないのが社会人なんだけどさ。
すぐに変わってもらえたおかげであっという間に解決したそれは、再び最終チェックをしている彩子に渡す。そのまま休憩に入ることを告げてデスクを離れると、待ってましたとばかりに女性社員に囲まれた。
「杉浦さん!良かったら一緒にお昼行かない?」
「あー…、いいですよ。皆さんお弁当ですか?」
朝のことを知りたくてしょうがないという空気を隠しもしないで近寄ってくる彼女達にイラっとしながら許可を出せば、嬉々として後ろを付いてきた。普段は挨拶も適当なくせにさ。
なんて文句を言える訳もなく、自販機のボタンに八つ当たりをする。
強く押しすぎた、痛い。




