化けの皮を剥がす③
「そっちがその気なら、僕もそうする。」
「はぁ?」
「連絡先も交換して、こうしてご飯に来て。もう友達だよね?仲良くしようか?」
「いや、言ってる意味分かんな…。」
あれ?この人顔が良いだけじゃない?話も通じないしクズだし、皆騙されてるのでは?それかお酒が入ると人格変わる人。
「石井さんはお酒弱いみたいですね。」
「は、弱くないし。彩子と一緒に飲んでても全然平気だったし。」
「何を言ってるんだか。」
突如聞こえてきた第三者の声に箸を落としかけた。個室の扉を開けて入ってきていたのはなかなかガタイの良いお兄さんだった。手には先程石井さんが頼んだと思われるお酒と、恐らく水の入ったグラス。
「槙ぃ、どーした?」
「どうしたじゃない。お前のテーブルやたら強い酒のオーダーが多いから、飲みすぎてないか見に来たんだよ。んで、これはどっちのだ?」
「僕のだよ。」
「はい、駄目。これで最後にしろ。ちゃんと水も飲め。」
槙と呼ばれたお兄さんが石井さんが言っていた友人らしい。少し客が減って余裕が出来たから様子を見に行くついでに頼んであったお酒を持ってきてくれたそうだ。しかし彼の状態を見て溜息をついている。
「卓斗がごめんね。此奴の友人の槙です。」
「正直こんなことになるとは思ってませんでした。彩子の友人の杉浦です。」
「あぁ、彩子ちゃんの。今日予約入ってたけどキャンセルになってて、何かあった?」
「ただの二日酔いです。」
どっちにしろ今日はこの店に来る運命だったらしい。今頃ベッドで屍となっているであろう彩子に槙さんと一緒に撮った写真を送っておく。ついでに屍になりかけている石井さんの写真も。明日復活した彼女に飲みに連れ出されて質問攻めにあいそうだ。
彩子の状況を聞いた槙さんは小さく笑ったあと自分にも水を渡してきた。
「この状態になった卓斗はしばらく動けないし意味分からないことしか話さないから、先出ちゃっていいよ。此奴に金は払ってもらうから。」
「え、いいんですか?」
「迷惑かけたみたいだしね。」
割り勘のつもりでいる時に奢りでいいと言われるとテンションが上がるのは自分だけだろうか。槙さんが少し引くくらいの良い笑顔でお礼を述べ、軽く水を流し込んでそのままお店を後にした。
あのままだと石井さんを家まで送らないといけなくなりそうだったから本当に助かった。時間もそこまで遅くないから電車もまだあるし。槙さんには女性一人で帰すのは心配だけどって言われたけど、全然気にしていない。
今度は一人で行ってみようと足取り軽く改札を抜けた。




