化けの皮を剥がす①
「「お疲れ様でした。」」
注文してすぐにやってきたグラスをカチンと合わせる。
石井さんの友人がやってるという店は、先日彩子に連れられた店と同じビルにあった。入店時に案内してくれた店員がアタシを見て驚いていたから、もしかしたら何度も彩子を連れて来ていたのかもしれない。
「先程の店員が失礼なことを言ってすまなかったね。」
「いえ、冗談だと分かっていますし。」
新しい彼女かとニヤニヤされた時は少々イラっとしたが、謝罪されるほどでもない。自分だってからかうだろうし。
「それで?狩野さんと、彩子のお話ですよね?」
「うん。…彩子は、元気かい?」
「今日は早退しましたけど、それ以外で特に変わりはないと思います。」
原因は二日酔いということは伏せた。彩子が彼に自身をどう見せていたか分からないから。
それを体調不良などと勘違いしたらしい石井さんは咄嗟にスマホを取り出していた。すぐにハッとしてテーブルに置いていたけど。
「あの、どうして彩子と別れたんですか?狩野さんに惹かれて終わりになったと聞いてますけど、正直今の石井さんを見ているとそこまでじゃない気が…。」
「さくらさんを良いなと思ったのは本当なんだ。気付いたら目で追うことが多くて。だからといって彩子を嫌いになったわけじゃないんだ。こんなフラフラした気持ちで彩子と一緒にいるのは申し訳なくて別れを告げたけど…。」
此奴クズじゃね?と思ったアタシはおかしくないと思う。まぁ、狩野さんに現を抜かしながら彩子との付き合いを続けるよりは遥かにマシだけどさ。
「さっきの狩野さんの様子を見て冷めた感じですか?」
「冷めたというか…。彼女もまんざらでもない感じでいたので、少し…ショックでした。」
「彼女のようなタイプは思わせぶりな行動が上手いといいますか…。」
先程のことを思い出したのか、それを頭から振り払うように彼はお酒を呷っていた。飲みっぷりは彩子に似てる気がする。追加で頼んでいたのも度数強めのものだったし。
だんだんと目が据わってきた石井さんは、彩子の話だけをし続ける。現実逃避なのかなんなのか。
同じことを繰り返すようになった辺りからはもうまともに相手をする必要がないと判断して、スマホ片手に適当な返事をしていた。本道さんから少し前に連絡がきていたので現状を愚痴れば、クマさんが頭をよしよししているスタンプが返ってきた。可愛いかよ。
「ちょっと杉浦さん聞いてます!?」
「はいはい聞いてますよー。」
面倒くさいなぁもう。




