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休憩室での盗み聞き③

彩子が早退したことで少し忙しくはなったが、大きなトラブルはなく無事に業務終了。飲みの予定がなくなったので夕飯を考えなきゃいけないけど、生憎冷蔵庫の中身はほぼ使い切ってしまっている。たまにはテイクアウトするのもいいかもしれない。そう考えて、店の検索をする為に一時休憩室に寄る。

残業組がちらほら居るくらいで、お昼ほどうるさくない部屋の入口に近い席に座ってスマホをいじる。本道さんはまだ未読のようで特に返信はなかった。まだ仕事中なのだろう。梅雨に入ると仕事が進まないから、今は結構忙しいって言ってた気がする。


(お、ここのスペアリブ美味しそう)


あの商業施設ほどではないが、会社の最寄り駅もなかなか栄えている。駅直結のビルに入ってる飲食店の一覧から惹かれるものを探し候補を絞っていると、そこそこな時間が経っていた。お昼同様一人ぽつん。


(予約は出来たし、行くか)


待つのは嫌だったので店舗受け取りの予約を済ませて休憩室を出ようとすると、ちょうど入ってくる人がいたらしく扉が勝手に開く。こちら側に開くタイプだったら顔面に当たっていただろう。


「すいませ…あ。」

「あ、…石井さんでしたっけ?」


なんと先日のイケメンだった。咄嗟に周囲を確認したけど狩野さんの姿はない。


「今日は僕一人ですよ。昨日はすいませんでした。」

「え?別に謝罪されるようなことは何も…。」

「彩子から聞いていますよね?」

「…まぁ、軽く。」


あの居た堪れない空間を作り出したことへの謝罪のようだ。あの段階ではまだ事情は知らなかったけど、詳しく話す必要もないと判断して濁す。

そしてなぜか、少しお話しませんか?と室内に戻されてしまい焦る。まだ承諾していないのに。アタシのスペアリブが待っているのに。早々にキャンセルなんて。


「あの、これ。」

「ありがとうございます。」


自販機で購入したミルクティーを渡してきた石井さんはそのまま向かいの席に座った。昨日よりも近い距離で彼を見たが、やはり顔面偏差値が高い。

これで仕事も出来るなら確かに女性受け凄い良いよなぁとしみじみ思っていると、コホンと咳払いする彼。また熱視線を送ってるように見えたらしい。


「そんなにお知り合いに似てます?」

「そうですね…もう会うことがないので懐かしくて…。」


彼等も元気にやっているだろうか。まだ自分のことを忘れないでいてくれてるだろうか。


「あ、すいません…。言いたくないことを…。」

「え?あ、違うんです!別に亡くなったとかではなく、なんていうか、ただ物理的距離の関係で会えないだけで…!」


アタシの言葉を変に捉えた彼に謝罪され慌てて否定する。世界が違うとは勿論言えないのでぼかしつつ伝えればホッとされた。

しかしそこから気まずい空気になってしまい無言が続く。結局何を話したかったんだろうと訪ねようとした時だった。


「もしもしー?」


壁を隔てた向こう側にあるロッカールームから甘ったるい声が聞こえてきた。

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