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朝顔畑の長石さん  作者: 傘霧千夏
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環状線と羽渡家

「また寄ってねー。」と長石さんが言った。

俺は軽くお辞儀をして、朝顔畑の一本道を駅まで戻った。

朝顔のつぼみがたくさんあって、朝顔畑はとても綺麗だった。


電車に乗って、家に一番近い艾原駅まで5駅。宵凪神社、平井牧場、夏風高原前、龍神山、そして艾原駅につく。


宵凪神社は離木山にあるが、隣の龍神山に住んでいるといわれる龍神様を祭っている。なぜ離木山に作ったのかは分からない。


平井牧場は、昔(今もだが)の大地主がやっている牧場だ。取り扱っているのは乳製品だけで、肉は売っていない。殺すのが忍びないからだそうだ。全国の精肉業者が卒倒するだろう。


夏風高原はどう頑張ってもインスタ映えしそうなほどの絶景スポット。俺はこの高原を避暑地として売り出したら一儲けできると考えている。


龍神山は、大昔(神話レベルに昔)に龍神様がこの山に降りてきたからこの名前がついたらしい。あいにく俺は無神論者なので、その話は信じていない。


艾原駅だが、艾とか言うくせに近くに一切艾が生えていない。これはサギだ。訴えるぞこの野郎。この地名をつけたときは艾があったのではなかろうか。


そんな解説を脳内でやっているうちに、艾原駅に着いた。

ちなみにこの環状線の駅はすべて無人駅なので、駅員さんという存在は俺は中学生になるまで知らなかった。


「ただいまー」

がちゃっと家の鍵を開け、土間で靴を脱ぐ。

うちは都会でいう『古民家』だから、土間やら囲炉裏やらがそろっている。流石に竈はなくて炊飯器とシンクだし、風呂だってちゃんとボタン一つでお湯が沸く。しかし、この村ではこれが普通だ。古民家に鍵は無いから、もちろん後付け。


もう6時だが、外はまだ暗くない。母さんと父さんは真っ暗になるまで畑にいるから、もう少しで帰ってくるだろう。


つまり、弟たちとの戦いが幕を開けるということだ。


「誠兄ちゃん遅い!」

「もう6時だよ!」

「うるっさい、6時はまだ明るいだろうが!」

兄ちゃん遅いと言ってきた最近可愛げのなくなってきた弟が、上から3番目で今年10歳。名前は平太。

もう6時だよとまだかわいげのある声で言ってきた愛すべき妹が、上から4番目で今年8歳。穂波という。

向こうの居間で二天堂のスウィッチをピコピコいじってるのが2番目で、14歳の弟。最近反抗期。飛という名前。こんな名前の人はそうそういない。

その隣で幸いにして火のついていない囲炉裏に手を突っ込もうとしている野口英世的将来有望なちびっこが、末っ子で3歳の弟。悩んで悩んで悩んだ末に祭理という名前になった。

今は見当たらないが、もうすぐ泥んこで帰ってくるであろう我が家一活発な5番目の妹は6歳だ。聡子という名前。

「兄ちゃん、スマブラやろーぜー。」

大乱闘スマートブラザースという格ゲーが最近の中学生組の流行りらしい。高校生組はスポラトゥーン3という最近発売されたばかりの色塗りバトルゲーム。しかし長月村に電気屋はないため、わざわざ山のふもとの青木村のほうまで行かねばならない。距離は5㎞ほどだが、山道を5㎞は時間がかかる。所要時間は徒歩2時間。バスはない。

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