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3話

 パーティー当日。俺と京は指示された会場に向かい、スタッフから受け取った服に着替えた。


「可愛いな」


 京のドレス姿に思わず京の頭を撫でる俺。


 いつもの元気で明るい印象はそのままで、より知的というか、大人の魅力を加えたような雰囲気を感じさせる。流石京だ。


「なつきもかっこいい!」


「ありがとう」


 少し照れて京から顔を逸らしつつお礼を言った。



 パーティーが始まった。


 一旦俺と京は別れ、別々の場所で人と交流を図ることにした。


 やはり周囲を見渡すと、育ちの良さそうな生徒が多かった。


 ウチの高校は普通の高校なのだが、系列校の方々は基本金持ちなのだ。


「こんにちは。青野です」


「こちらこそ。相模俊介です」


 まさか相模グループの御曹司か!?


 とりあえず失礼のないように。無難に。


「青野さんはあの佐倉さんと同じ学校だよね?」


「そうですね。昔からの付き合いで仲良くさせてもらっています」


 結局あいつか。本当に有名なんだな。


 そう考えていると相手の凄さとかどうでも良くなってきた。


 適当に話した後に京に繋げてやった。


 少し怒った顔をしていたがこのパーティーはそれが仕事なんだ。堪忍してくれ。


 その後話した人も有名な企業の御曹司だったり、有名人の子供だったりしたが、大抵京のファンだった。


 京一人でよかったんじゃないかこれ……


 まあ京に変な虫が付く可能性があるから結局来ていただろうが。


 そんなことを呑気に考えていたら京の周りに異様な人だかりが完成されていた。


 流石に心配になったので京を救出することにした。


「ちょっと通らせてもらいますね」


 流石に育ちが良いだけあって言えばすんなり通してくれた。


「なつきくん……」


 流石に疲れているご様子だった。


「ちょっと疲れているようなので一旦休ませてあげてください」


 そう言い俺は人の群れから引き離した。


「ふう、疲れちゃったよ」


「いつもはあんな感じで人が集まることは無かったもんな」


 京野をよく知っている同級生はここまで京に興味を持たないし、他学年の生徒は憧れの視線を向けるが遠巻きに見て、一部が近づいてくるくらいだ。


 こんな感じで積極的に関係を作ろうとする人が集まることは滅多にない。


 有名ではあるが、芸能人とかのレベルではないからな。


「とりあえず休んどいて」


「うん。ありがとう」


 俺は飲み物を取ってきて、渡してからあの群れの対応をしようとした。


 すると、いつの間にかその群れは跡形も無く消え去っていた。


「相変わらずの人気だね京は」


 やってきたのは進藤玲。京の昔からの友人だ。


 京が小学校で通っていた絵画教室で仲良くなったらしく、その流れで俺も会話する機会が何度もあった。


 こいつは女子だが男子が嫉妬するほどのイケメンで、京曰く絵画教室で女子に大人気だったそうだ。


 成長して一層魅力が増しており、今回のパーティーでも女子からの注目の的だ。


 だがしかし、絵は絶望的に下手だ。絵画教室に通ってすらない俺ですらこいつよりは絵が上手い自信がある。


 その分歌が上手かったり、運動神経が抜群だったりと、モテに必要な要素はきっちり回収しているのだが。


「そうだな。玲も負けず劣らず人気のようだがな」


「ありがとう」


「それであの集団を散らしてくれたのは玲か」


「そうだよ。流石に京のキャパを超えそうだったからね。ったく夏樹がちゃんとセーブしてあげなきゃだめでしょ。京は少し無理するところがあるんだから」


「すまない」


 正直やけになって京に人をぶん投げてしまっていた。流石に反省する。


「ほらほら。代わりに私が相手するから、夏樹は京の所へ行きな」


 玲はそう俺に言い、一人パーティーの中に戻っていった。


「というわけだ」


「流石玲ちゃん」


 完全に気が抜けたのか、俺に抱き着く京。


「ここではやめてくれ」


 今は見られていないから問題なかったが、この様子がバレてしまうと他校の方々の視線が不味い。


 ほら、こうやって一人。俺たちを見ている。絶対嫉妬の顔だよ。


 いや、俺は悪くない。


 また一人気付いた生徒が。何やらスマホをもってどこかに行った。


 ちょっと待て。そのスマホで何をするつもりだ?


 それでも京は離れようとしない。


「俺の社会的地位が死ぬから」


 強引に引き剝がした。


「夏希君……?」


 やめてくれ。そんなうるうるした視線で見るな。


「あの京さんを泣かせた……?」


「あれって京さんと同じ学校だろ?」


 これはこれでまずい。


「夏樹。それはまずいよ……」


「本当にすいませんでした」


 諦めて俺は京を抱きしめた。


「皆さんに色々言われそうなので隠していましたが、京は俺の彼女です」


 もうこれで乗り切るしかない。後で京には土下座しよう。


 じゃなきゃ社会的に殺される。


「こいつが……?」


「家柄も普通で何も実績を持っていないのに?」


 分かってるわ。知るかボケ。


「まあまあ落ち着いて。ここにいる青野夏樹君は佐倉京さんの幼馴染でね。長い間関係を紡ぎ、最近見事にゴールインしたんだよ。それに、この子は京が有名になる前からアプローチを続けていた。それだけで資格は十分じゃないかい?」


 見かねた玲が助け船を出してくれた。が、この出し方は不味いのでは?


「ただ偶然近くに居ただけじゃねえか」


「そうだそうだ」


 あ、やっぱり。男性陣から変わらず文句が上がる。


 というかより一層怒りの声が。


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