1話
キンコンとチャイムの音が鳴り昼休みになった。
俺はいつも通り優雅にカバンの中に入っていた弁当を取り出す。
気分は貴族だ。貴族は学校で弁当を食べないことには触れないで欲しい。
そして食べ始めようとしたとき、
「なつきくーーーーーーーーん!!!!!!」
いつも通り女の子が大声をあげながらここに駆け寄ってくる。
「はいはい。京ちゃん」
俺は当然ここまで駆けつけてきた女の子の頭を撫でている。
この俺に抱き着いている美少女の名前は佐倉京。幼稚園の頃からずっと一緒にいる幼馴染であり、彼女だ。
昔から京はこんな感じで俺に懐いてくれている。
当然俺も京の事は大好きだ。そもそもこんなに可愛い女の子を嫌う人間なんていないと思う。
「相変わらずのバカップルだな。青野」
呆れた表情で俺の隣の机に腰かけたのは平野大。高身長でスポーツ万能の優等生だ。
「バカップルじゃない。ただ普通に付き合っているだけだ」
「じゃあ当然のように佐倉の頭を撫でるのをやめろ」
はっ!まだ京の頭を撫でていた!?
いや俺は悪くない。京が可愛いのが悪い。
「驚きの表情をするんじゃねえよ。しっかりと手に感覚はあっただろ」
「確かに……」
確かにさっきまで幸せに包まれていたような気がする。いや今もだけれど。
「ん!」
撫でるのをやめたからなのか、京は顔を膨らませて右手を掴み頭にのせた。
まだやって欲しいらしい。
「はいはい」
また撫で始めると幸せな顔をしていた。可愛い。
「本当に京ったら……授業が終わったからって廊下走っていかないでよ」
「お疲れさん」
京に文句を言っていたのは涼野椿。身長は女子にしては高めで、スタイルはかなり良い。
正直モデルにもなれるポテンシャルはあるのだが、壊滅的にファッションのセンスがない。
学校では制服なので髪型が変程度なのだが、私服の彼女を見た時はしばらく笑いが止まらなかった。
そのため美人なのに皆には気付かれておらず、全くモテていない。
「まあ無事にここに居るならいいよ」
この言葉から現れている通り、涼野さんも京に甘い。
「とりあえず飯だ飯」
気が済んだのか京も抱き着くのをやめて飯を食い始めて数分が経った頃、
「男子諸君!今から祭りの時間だ!」
そう言い現れたのはうちのクラスの沢田修也だ。
このセリフの通り、だいぶアホだ。
だが、クラスの男子も同じような感じなので、大騒ぎとなる。
んで今から何が起こるのかと言うと、
修也が集めてきた学校の美人を集めた写真集の公開だ。
沢田の作る写真集の完成度は非常に高いのでクラスだけでなく、同級生の男子の中でもかなりの1大コンテンツになっていたりする。
ただ沢田が言うには本人からの許可を取っていないのでバレたら死ぬとのこと。
にしては正面からの写真が多いので、どうやってその写真を撮っているのかは生徒たちの中での大きな謎である。
「なんだ?ついに出たのか?」
それに釣られて大は沢田の所へ向かって行った。
「全くあの馬鹿どもは……」
涼野はそんな男子共に若干呆れている。
今はこの程度で済んでいるが、涼野にそれがバレた時は沢田が必死に土下座をするまで怒り狂っていた。
バレた時の特集に涼野が居なかったことが功を奏したようだ。
とは言っても涼野が乗っていたのは一度だけ。それも俺と京が全力でコーディネートした時に写真なのだが。
その回は今までの写真集の中でトップの人気を誇る伝説の一作として語り継がれているが、その正体を知るのは俺と京と涼野の3人だけで、秘密裏に捜索活動が行われている。
大はその事を知らず、写真集で見た涼野に一目ぼれしており、時折その話をしてくる。
目の前に涼野がいる中で。
そして京はというと、写真を撮れそうな隙が殆ど見つからないので一度も採用できていないとのこと。
可愛い女子の写真集だから男が映りこむ写真は絶対に使わないという沢田の信条が、京が写真集に出ない最大の理由らしい。
それを来た時は心の中で沢田に謝罪した。
正直他の奴らにそういう目で見られるのはいただけないが、京の魅力を皆に知ってもらえるのならやぶさかでは無かったりするのだ。
まあそんなことをすると涼野に殺されるけれど。
「あれは何なの?」
「「京は知らなくていい」」
あんなものを知って京が汚れてはいけない。
その後京の興味を別の法に誘導しながら、祭りが終了するまでを乗り切った。
「それじゃあ放課後!」
「またね」
飯を食べ終わったタイミングでチャイムが鳴ったので急いで教室に帰っていった。
そして放課後。
昼休み同様全力ダッシュで駆けつけてくる京。そしてその後ろをゆっくり歩いてくる涼野。
「いつもありがとう。じゃあ帰ろっか」
「俺は部活に行ってくるわ」
「いってら」
「ガンバレー」
「涼野はもう少し気持ち入れて応援してくれ」
「がんばって、大お兄ちゃん♡」
「ぶりっ子するんじゃねえよ気持ちわりいな」
「じゃあ変な要求すんな。さっさといけ」
涼野が大の尻を蹴り、さっさと部活に向かわせた。
俺たちは教室を出て、靴箱に向かったら、
「どこにあるんだ!?木村、本当に覚えてないのか?」
「ごめん。寝ぼけながら荷物持って行ってたから何も覚えてない」
「だから眠い時は私に任せてって言ってるでしょ」
「でも私の勝手で仕事増やすのは美月に申し訳ないじゃん……」
必死に何かを探している生徒会の方々が居た。
「どうしたの会長」
とりあえず何があったのかを聞くため、生徒会長である吉村礼二に事情を聴くことにした。
読んでいただきありがとうございました。
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