おまえのような聖女がいるか!!(原案)
例のアレの最初に思いついたやつ
異世界、王国、勇者が仲間を引き連れて魔王討伐の旅路へつく春のこと。
なんと、勇者不在の王城へ、ゴブリンの群れが突撃するッ!
「「「ヒャッハー!」」」
◯王城・召喚の間◯
最上階、奥の部屋、ツヤツヤの床の一段高いところ、魔法陣が展開されている。
城の主要人物たちの、避難所である。
大臣:「大変です。ゴブリンの群れがもうすぐそこまで迫っています。」
国王:「なんだと、騎士団は何をしている。たかがゴブリンごときに……」
大臣:「それが、やつらただのゴブリンではありません。全員Aランクの【モヒカンゴブリン】で構成されたエリートな突撃部隊です!」
国王:「なにぃ!?」
ガッシャーン!!
ドカバキ、ドゴォォォン!
ゴブ:「ヒャッハー」
ゴブ:「汚物は消毒だー」
ゴブ:「出てこい国王、その首、魔王様に差し出してくれるわッ!」
身長まさかの2メートル、筋骨隆々の巨漢であるッ!
扉へ迫り、肩でタックル。ドンドンドンと音をやる。
木製のドアはきしみ、たわみ、金属の鍵が音を立て、木くずがパラパラしているぞ!
国王:「えーいくそ、やむをえん。聖女召喚だ!」
大臣:「待ってください。まだマソエネルギーが70%弱、成功率は……」
国王:「かまわん、やれ。早くしないと間に合わなくなるぞ。そら魔導士ども、仕事だー」
魔道士ども:「「「へーい」」」
72人の魔導士が、その魔法陣をとり囲み、手から黄いろのナミナミを、汗だし声だし注いでいる……
ゴブ:「「「押せ、押せ、押せ」」」ゴドォ
バリバリィ!
ゴブ:「「「ヒャハハハー」」」
と、なだれ込む!
大臣:「うわぁ」びくびく
国王:「うわぁ」びくびく
ゴブ:「国王、獲ったどー、しねぃ!」
団長:「まてぃ、我こそは騎士団長の……」
ゴブ:「うるせぇ」ドゴォ
団長:「うごッ」ばた
不意の腹パンが、急所に当たった。
大臣:「そんな、団長が一撃で……」
国王:「もはや、これまでかッ……」
と、その時!
ビシャァァン!!
その時、空に暗雲うずまいて、落雷ッ!
立派な城の屋根へ落ち、その雷光は魔法陣へと流れ、発光!!
カァァァッ!!
まばゆい、閃光が、ほとばしるッ!
ゴブ:「うわっ」
ゴブ:「眩しい」
国王:「おお、ついにやったか!?」
聖女?「……」
光が静まるとそこに、マッチョがいた。
腹筋は、オリハルコンの鎧のごとしッ!
四肢は、ヒラメのようにデカイッ!
肩は鉄槌、胸には鉄球
背中に宇宙が宿っている。
見るからに強いぞッ!
そして顔だけ金髪美少女。無表情。コラ画像だ。
国王:「な、なんという、おぞましい姿、ワシは夢でも見てるのか?」
大臣:「伝説の超聖女様にそっくりです。顔だけ……」
ゴブ:「ああ、なんだテメエは」
ゴブ:「えらいムキムキガールがやって来たな」
ゴブ:「転移して戦い方を覚える前にしねぃ!」ヒャッハー
と、飛翔! バッタみたいに飛びかかるッ!!
国王:「しまったぁ!」
大臣:「聖女どの、ステータスを……」
ゴブ:「もう遅いッ!」
疾風迅雷、緑の拳、流星のごとし!
聖女:「どけ」スッ
まさかのバリトンボイス!
あわてる2人を壁際に弾き、筋肉の呼吸! スゥゥゥッ!
左足を出して、腹筋をかため……
聖女:「はぁあああ! アチョー! あたたたたー!!!」
右足をブン回すッ!!
ゴブリンの顔面へッ!!
ゴブ:「あべッ」
ゴブ:「ぷぴゃ」
ゴブ:「おごぉ」
ボォォカァァァァァン!!! 爆発四散
国王:「目で追えなかった。かつてSランク冒険者であったこのワシが」
聖女:「【天地爆裂脚】、肉体精神ともに核を砕き、粒子の粒より細かい、エネルギーへと帰す技だ」
国王:「お主、いったい……」
聖女:「おれはセーダ。セーダ・アームストロング。あの世一の筋肉だ」
◯王城・食卓◯
長いテーブルに色とりどりの料理が並んでいる。よく見る光景だ。
国王と聖女が向かい合い、警護の兵士がズラリと立ち並ぶ。
セーダ:「うまいッ!」もぐもぐ
「うまいッ!」もぐもぐ
「うまい、うまい、うまいッ!」もぐもぐ
皿が積み重なっていく……
国王:「いい食べっぷりですな」
セーダ:「ああ。あの世では桃やリンゴや雲ばかり。久しぶりの肉だ」
国王:「あの世ということは、セーダ殿はやはり……」
セーダ:「ああ。生前はステロイドの過剰摂取で心臓発作になった。死後は天国と地獄で魂の無限筋トレをしていた」
国王:「なんと!」
セーダ:「先程の術式で、新たな肉体を得た。感謝する」
皿が乱雑に積み上がる。
こうして話は夕方まで続く。
◯王城・謁見の間◯
日暮れ、知らせを聞いた勇者たち、空を飛んで駆けつける。
荒れた城壁を見て、なりふり構わず窓から突撃する。
勇者:「王様ッ、無事ですか」
戦士:「遅れながら、馳せ参じました」
魔女:「外壁は半壊だったけど、中は無事かしら?」
盗賊:「……大丈夫。魔物の匂いはしない」
国王:「ああ、勇者たちよ、よく来てくれた。ありがとう、まずはゆっくりしていきたまえ」
勇者:「という事は……」
国王:「そうだ。危機は去った」
大臣:「新たな聖女を召喚したら、伝説の超聖女を超えたバケモノだったのだ。これで国家は安泰である」
勇者:「む、その聖女とやらはどこへ」キョロキョロ
目線をぐるりと巡らせる。
まずは騎士団長、隣の金髪マッチョ女、そして魔導士たちやら大臣やら。聖女らしいのは見当たらない。
セーダ:「ここにいるぞ」
金髪マッチョが上腕筋を盛り上げてアピールする。
勇者:「は?」
セーダ:「セーダ・アームストロング。聖女をやらせてもらっている。よろしく」
勇者:「んなっ……!?!!?」パチクリ
国王:「彼女こそ、かの伝説の超聖女を超えた究極完全グレートマッチョだ。勇者よ、セーダ殿とともに魔王を打ち倒して来るのだ」
勇者、しばらく口をぽっかり開けている。
突如、マッチョの首あたりを指さして、
勇者:「お、お、お、……」プルプル
と、ためて、
勇者:「おまえのような聖女がいるか!!」カァァァン
セーダ:「なにぃ!?」
勇者:「魔王の手下だな?」
国王:「血迷ったか!」
勇者:「そんな聖女がいるわけないだろ。目を覚ませ!」
国王:「ハッ、たしかに……いやいやセーダ殿は立派なマッチョだ。この目で見たのだ」
勇者:「騙されちゃダメだー」
魔女:「ちょっと勇者ちゃん落ち着こうね」ベシベシ
戦士:「感情的になるのは良くないでござる」
盗賊:「王様、たいへん失礼いたしましたぁ〜」
勇者:「おい何をする、はなせ!」
と、パーティーメンバーに引きずられて退場。
セーダ:「何だったのだ」
国王:「実はな、勇者と聖女は魔王を倒した後に結婚するのが慣例なのだ」
セーダ:「なんだとッ!」ガタッ
国王:「歴代勇者と聖女100人、みな結婚して子をなした。お主で101代目だ。どうだ、結婚する気はあるか?」
セーダ:「ない。おれは筋肉と結婚している。この愛が移ろうことは未来永劫、ありえないッ!」
と、最強のマッスルポーズ。
なぜか国王には黄金に輝いてみえたという。
国王:「そう言うと思っていたぞ」
セーダ:「代わりにこの肉体が朽ちるまで、この国を守ってやろう」
それはまるで北極星のごとき不動の光。
幾多の難敵が国を滅ぼさんと荒れ狂い嵐となろうとも、その筋肉は台風の目のごとく平穏をもたらし続けるであろう。
王城の窓から流れ星、水平線へと落ちていく。
なんかこっちのほうが面白そう?