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美談

「イニウスー、ちょっと来てー」


 フレーネの言葉に呼ばれ店の奥から出る。すると見たことのある少年がいた。


「これは、以前に相談をご利用頂いたお客様ですね。本日はどのようなご用件で?」


 後払いに来た、が欲しい結果だが恐らく表情からそうではないことが予想できる。


「その、実は……」


…………


 要約するとこうだ。これまで彼に危害を加えられる場面を俺が言ったようにして一人の教師がそれを目撃させた。しかしそれを貴族という権力によってその情報は上に行ったところで握りつぶされてしまった。


「それは……とても酷い……」


 フレーネが感想を述べる。


「なるほど、申し訳ございません。過去の私はそれについて考えておりませんでした。それでは、今回の対処としては……」


 権力で握り返されるならそれよりも強い権力で打ち返せばいい。そのためにどうするかは――まずは情報だ。


「では、彼らの爵位をご存知ですか?」

「えっと、一人が子爵で他三人が男爵です」

「それでは、その子爵の家名はご存知ですか?」

「リュザールです」


 そう少年が口にするとフレーネが「うげ」と声を出した。


「何か詳しく知っているのかフレーネ?」

「私はそいつの姉にすっごく突っかかってこられたのよ。てか、あんたも何回も難癖つけられたでしょ。覚えてないの? 三人の貴族引き連れた嫌な女」

「ああ、そんな奴いたな」


 彼女は呆れた顔をする。興味がないことはどうでもいい性分なのだから仕方ない。


「さて、それでは早速対処法についてお話しいたしましょう。そうですね、では子爵以上の同級生や先輩で協力してくれそうな人を探します。そこで、上層部で行われる情報の握りつぶしに対処してもらうのです」

「でも、僕みたいな平民じゃ協力なんてしてもらえないと思うんですけど……」

「ええ、それはそうでしょう……対価なしでは」

「いや、でもそんなにお金持ってないですし」

「別に金でなくても彼らに利益を与える方法はあります。今のお客様の状況を利用して」


 そう口に出すとその少年とフレーネは疑問を顔に出す。


「人というのはか弱きものを助けることを美談とする性質があるのです。幼き頃に聞いた童話を思い出してください。囚われの姫を助ける英雄譚、小さな竜を助けるお伽話、貧民達に慈悲を与える聖女の行い。有名なところはこの辺りでしょうか」


 客はそれについてわかっていることが表情から読み取れる。


「では、例えばか弱いいじめられている平民を助ける貴族様。聞こえはとても良いではないですか?」

「えっと、つまり美談として讃えるから助けてほしいと交渉するんですか?」

「その通りです! 何人かは断ってしまうでしょうが必ずその利益に理解できる者がいるはずです。その結果彼らはお客様に対してこれまでのようなことは無くなるでしょう。今後その貴族などを褒め称える必要がありますがこれまでの学校生活と比較したらどちらの方がいいかは明白でしょう」


 彼はそれを聞いて笑顔で頷いた。


「はい、言われたようにやってみます! ……ってああ! 前払いの分払ってませんでした、今からでも――」


 彼はバッグに手を入れるが俺はそれに「いいえ結構です」と言って止めさせる。


「いやでも……」

「前回の相談の続きですのでもうお受取りしました」

「……わかりました」


 彼はそう言って立ち上がって軽く頭を下げた。


「では、またのお越しを」お待ちしております」



 ……彼が店から出るとフレーネが話しかけてきた。


「意外ね、お金払う気あったのにあんたが止めるなんて……」

「ハッハッハ、お前はさっきの話の何を聞いていたんだ! 虐げられている平民を助ける為の相談をして、それで一部の支払いを断る、まさしく美談ではないか! 彼はこの店のイメージアップに一役買ってもらうことになる」

「ちょっと見直した私がバカだった……」


………………


 店を閉めて諸々やることを終えるとフレーネは帰っていく。

 彼女が働くようになってから作業が減って研究に費やせる時間が増えた。



 この世界の全ての人間はどうやら心臓に石があり、それが魔力とやらを操作することができるようだ。その根拠は先天的に魔力を動かせない者の死後、心臓を切り開くと石がなかったという記録がある。

 というか魔力とかいう名前やめないか、どう観測してもエネルギーでなく物質だろ。魔素あたりの方がいいだろう。だが俺だけで決めても他と噛み合わないから仕方がない。


 さて、この電気を生む魔法陣。

 魔法陣の第2象限の外円側が電子を表す文字で、内円に書かれているものが……60^−2 × 4、魔法陣に用いられている数字がこの世界でも普段使う10進法ではなく60進法だから、10進法で小数に直せないことが多くてこの表記にしないといけないことが多いのだ。

 で、この数字の次に謎の文字。それに……60^3、つまり21.6万か。その後にさっきとは別の謎の文字。

 そして1、最小単位の時間を表す文字。だが魔法陣の一秒はこの世界の一秒よりも短い、確かにこの世界の秒に直すには0.4倍すればよい。魔法陣の中では一日を60分割を三回繰り返す時間単位だからな。


 どうやらこの世界の人々は10進法しか数学的には理解していないようだがな。


 そして……この電気を作る魔法陣のみで見られるこの謎の文字、それによくわからん小数がかけられて、さらに秒数がかけられている。これクーロンか……?


 この謎の文字を電気素量、eと仮定して魔法陣の第4象限の外円に位置する、定数及び変数を入れる場所にこいつの×6.24……でもういいかアバウトで。6.24×10^18、それを秒数に直す――ああクソ、60進法に直すのが面倒だ、コンピュータが欲しい。で、これをA(アンペア)とする。


 …………できた、これ魔ガラスに書き込めば……


 よし、後は魔力を流し込めば……! ッ!? 

 思わず変な音が喉から出る……ベクトル指定忘れてたから全体に放電して電撃食らった……


 だが大成功だ!! 直接金になるかはわからんが電気を操れるというのは科学――化学物理においてとんでもないアドバンテージだ!


 そういえば腕は大丈夫か? 電撃を食らった手の指をある程度動かし問題ないことを知る。

 さて、となると60^3に付いている単位は恐らくV(ボルト)に値するだろう。電流電圧を操れるとなったら何から手をつけようか……


 溶液の電気分解はまず浮かぶな。電気エネルギーから別のエネルギーに変換は魔道具があるから敢えてやる必要もないいし……

 かのニコラ・テスラがやったように放電ショーでもやるか……

 それともまさかのスタンガン? いや王都だから治安いいからまだ需要ないか。

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