五色目 黄色い花のおくりもの
日に日に雪が降る日が減っていき晴れた日が続いていた。気温も上がり、気分も上がり、憂鬱なシロも溶けて水たまりに変化していた。それを水色の長靴で踏んで水を跳ね飛ばしながら通学路を歩いていた。
川沿いの道には桜の蕾が所々見られ、蕾の間からはピンクの花びらがこちらを覗かせているように見えた。
道沿いを見てみるとタンポポの綿毛が生えていた。
あ―――ぽぽじろう!
暖かくなってからは桜ちゃんと遊んでばかりいたからあの公園には行っていなかった。
駆け足であの公園へ向かう
ぽぽじろう!
「ももちゃん、久しぶり……」
ぽぽじろうは白いフワフワの綿毛をたくさんつけていた。雪の日にみた小さい黄色の花をつけていたぽぽじろうとはまるで別の花のようだった。
「ぽぽじろう!何処かへ飛んでっちゃうの?」
「そうだなぁ…そろそろお別れの季節かも知れないな…」
「私が……冬はいやだ。春になれって願ってしまったからだ…」
「季節は移り変わるんだから、そんなに落ち込まなくていいんだよ。また、来年も―――」
「どうやったら来年も会えるの?」
「ももちゃんが僕のことを出会ったときみたいに探しにきてくれたらいいんだよ。昔の冬の日みたいに――」
「昔の雪の日―――?」
そのとき、急に強い春風が吹いてきた。私達に春を教えてくれる暖かく優しい風。
ぽぽじろうの綿毛が舞い上がった。フワリ、フワリ……雪みたいだなぁ…
綿毛は残り一つになっていた。
「最後の綿毛はももちゃんにあげるよ」
雲ひとつない青い空へ雪みたいに舞い上がった綿毛から声が聞こえた。
「ありがとう。私のこと見守っていてくれて―――」
私は家の花壇にぽぽじろうからもらった綿毛を埋めた。
「また、次の冬に会おうね」
毎年、憂鬱だった冬に私の一つの楽しみができた。