三色目 ピンク色の友達
昼休み、私は今朝のぽぽじろうの魔法が気になり図書館へと足を運んだ。
「あ、ももちゃん。今日も来たね」
そういって声をかけてくれたのは同じクラスの席が二つ前の人だった。
一週間前ぐらいから図書館で花の本を読んでいると彼女も花の本が好きらしく私に声をかけてきたという訳だ。
昨日も一昨日も彼女との会話は一言、二言で途切れてしまって続いていなかった。
「うん……」
「元気ないの〜?っていつもどおりか…。ももちゃんとたくさんお話ししたいのになぁ〜」
私は話すのも人に合わせるのもあまり得意じゃない。
でも、いつもみたいにモノクロの渦に飲み込まれなかった。
辺りを見渡しても色は付いている。この調子なら勇気を振り絞って話しもできるはず。
「あの……」
「な〜に?」
「あ、あなたは何の花が好きなの?」
「私は向日葵が好きだよ!太陽に向かって真っ直ぐ伸びるあの姿に感動されるから ってももちゃんが自分から話してくれるなんて嬉しいな〜」
「わたし、人と話してもいいかな……」
「いいに決まってるじゃない!」
「本当に?本当?」
「本当、本当!もっと、ももちゃんとお話したいよ〜」
私の中に渦巻いていたモノクロの霧が晴れた。物凄い風が吹き飛ばしていった。
世界が銀世界になってもそれを照らして違う色を見せてくれるものもあるんだと初めて気付かされた。
「ももちゃんはどんな花が好きなの?」
「わ、わたしはタンポポが好きだよ。何処にでもありそうだけど、あの力強さを見ていると勇気がもらえるんだよ」
「そうそう、タンポポって別名、鼓草っていうんだって〜。太鼓のポンポンって叩く音からタンポポって名前がつけられたらしいしいよ〜」
「えー、知らなかった。物知りだね」
太鼓か
ぽぽじろうの魔法の音がふと過った
「そういえば、私、あなたをどう呼んだらいいのかな…。同じクラスなのにごめんね」
「いいの、いいの〜。私はね 」
華やかな花びらが目の前で溢れてきそうな名前。
「私の名前は八重 桜!」
「あなたの名前って綺麗ね!」
「あ、ありがとう…」
それが彼女との出会いだった。私は彼女を桜ちゃんと呼ぶようになった。
静かな図書館での出会い。初めて仲良くなった人。その人は私に花を咲かせてくれた。
八重 桜って綺麗な名前だね。心の中で桜、桜って反芻した。