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伍歳 おや? メイド(ポテモソ)のようすが……。

 ご本読んでご本。

 私が本を差し出すとうちのメイドが無視します。

 なんか慌てふためいたようで怪しい。


「あああああ?! 別に怪しくなんてないですよ?!」


 普段クール系なのですが私にはベタベタ甘いです。ビターです。

 その彼女、アンジェがわたしに隠し事をしている模様で。



 お父様お母さまは王都で仲睦まじく過ごされているようで領地になかなか戻れないようです。

 後で知ったことですがこの時期は王都で王子がまた生まれて色々バトルしていた模様です。こっちの私に飛び火しないように私を遠ざけて一家全滅を避けていた模様。平民との試し腹であるうちの兄はあくまで平民扱い、騎士や文官になれても継承権などありませんからね。



「しかし筆頭補助官は可能だ! フェリクスの小童にうちの継承権があると思わせるな!」



 父は兄を可愛がっていますから微妙なところです。なんかますます可愛さと聡明さに磨きがかかっていますし。彼。

 あとお母さまも兄を可愛がっています。普通そこは嫉妬して毒殺とかしないのですかね。



 フェリクスさんはうちの分家で男性が基本家を継ぐこの国において公爵家継承権は筆頭となります。私は父の血筋であるということは王族の血筋も一応引いているのですが諸々の男性を考えたら私の王位継承権は1000位くらいにおさまります。これでも王家に女性がいない現状、女性の中では最上位にあたるのですが。


 というか貴族多すぎです。

 この場合は騎士や男爵も当たるのですが、王家はいくら何でも城に出仕する騎士位や男爵家の令嬢に手を付けすぎでしょう。

 そして絶対に王位継承権が実質存在しない彼らより私の継承権が低いというのは特筆に値します。



「女って得じゃないですよね。あんじぇ」



 ガチャーン!


 あろうことかうちのメイドが食器を割りました。

 それがお給金より高いとかせこい事はいいませんが彼女にはありえないことでして。



「そっそそそうでががが」


 口を押えたところを見ると舌を噛んだのでしょう。

 涙目で私を見てこう告げます。


「お嬢様」

「なあに」


 彼女の眼に温かな光が。


「大きくなられましたね」

「あなたが生まれる前の私とお母さまを狙ってうちに忍び込んでお兄様にボコボコにされなければ産まれていませんけど」


 撃沈したようです。

 あれ? お兄様って私より一つしかちがわ……あれ?



「しばしお暇をいただきたいのです」

「お兄さまやお父様にボコボコにされたくばそれも良きかと」


 彼女の目線がさっと私からそれました。めっちゃ怪しいのですが。



「ところで、私の能力はご存知ですよね」

「体液が猛毒で男性は触れることも叶わず、結果子を為すこともない。でしたっけ」


 だから彼女は恋とか知らないはずですし、男性に懸想して情報漏洩するリスクもありません。

 あと兄より弱くても並みの完全武装の近衛兵数人、辺境防衛隊の精鋭一人と短剣一本で渡り合える実力だそうですし。



「例外があります」

「うちの家系は竜族や神族の加護を受けているので毒が効かないのですよ。それを知らなかったのがあなたのミスですよね」



「その、あの。弟君が生まれたのはご存知ですよね」

「……? ええ。お母さまが大喜びしてお手紙を」


 そういえば乳母にも子供が生まれたとか。どっちの子供かは存じませんが。



「おねがいします。黙って辞めさせてください」

「この世界に職業選択の自由があると思いですか」


 というかあなた、うちを襲ったからメイドしているのですよね!? 立場をお忘れですか! というか今夜ご本読んでくれなかったらおねしょしてやる!



「ショクギョーセンタクノジユウは存じませんがそのあの」

「……言って」


 彼女は指先をツンツン合わせて乙女のように頬を赤らめています。



「罪の意識に耐えられず」

「あなたは自分が何人殺したかご存知ないでしょう。今まで食べたパンの数より覚えていないのでは」



 彼女の頬の赤が耳元にまできています。


「その……子供が出来まして」

「( ゜Д゜)ハァ??」



 驚愕する私。

 イヤイヤマテ。彼女は乙女のはずです。


 なんせ彼女と致すどころか口づけを交わすだけで普通は死にます。私の一族は毒も病気も効かないので私は彼女にご本を読んでもらったりできます。乳母は普通の人間ですが兄は別口で毒だけは無効です。そのかわり薬も効きませんが本人は医者もびっくりの薬学知識持ちです。



「ヒロシ様にも確認してもらいました。もうこの家にはいられないのです。ごめんなさい本当にお暇を」

「……お兄ちゃんを呼んできて今すぐ説明プリーズ!?」



 翌日。馬車で急ぎやってきた。

 否、馬車にひったてられて来た父は母にボコボコにされ、乳母に睨まれ正座しています。



「仕事と対暗殺のストレスがマッハでついつい領に戻って安堵していると年頃になったメイドがいた」



 そのような世迷言を国政ナンバーツーの彼は申しており。


「で」

「ヤッたらできた」


「できたじゃねえええええええええ!!!!!!!」


 珍しく兄が父をマジギレでしかりつけています。あれ?



「ああああ? お前おしめかえてやったのだれよ?! 信じられねえ! 前回に続いて今回も何してるの死ぬの?」

「いや、ほんとごめんにいちゃ……」



 ん?

 んん?

 んんん?


 私と母の『???』にコホンと咳ばらいをする父タロット。思いっきり蹴りを入れる乳母メイア。

 今、乳母が国政ナンバーツーに蹴りを入れたような。



「というわけで」


 『反省中』の札を付けられてしょぼくれる父を脇に母はにこやかに呟きます。


「お母様が増えましたのでそのつもりで」


 マジですか。



「はい」

「はい。シンジュ」


 私達兄妹はあっさりそれを認めました。



 メイドは おかあさまに しんかした!



 まがりなりにも継承権がある子供が二人、無い子供が一人産まれるのでめでたいのです。

 しかし懐妊中にやれないからって全身毒の塊と致そうとする父はどうかと思います。確かに浮気はバレないでしょう。身分、立場、雇用関係。アンジェと父の間は圧倒的な圧がありアンジェは父を断ることは不可能だったでしょうしこれをパワハラセクハラと言わずしてなんだと。



「……嫌いじゃないのです」

「はい?」


「イケメンですし」

「……聞かなかったことにします」


 あとアンジェ、cool系ですけど自身の猛毒の身体は家中には周知で誰も手を出してこなかったので超ウブだったのもあるようです。イケメンならナニしても許されるのかふざけんなこんちくしょう爆発しろ父上。



 翌年。

 猛毒の身体の特性から子供ができない、できても脳や身体機能に重要な損傷があることを懸念されたアンジェの子供ですが、大方の予想に反して健康な子供が産まれました。

 アンジェは経緯はさておき自分が子供を抱ける日が来るとはとマジ泣きしていたので良かったのかもしれません。


 これでうちは兄(継承権なし)、私(継承権あり)、弟セフィロス(継承権あり。公爵家世継筆頭)、メイアの子アンジェリカ(継承権なし)、アンジェの子アンジェリーナ(継承権あり下位)と手駒が揃ったことになります。


 というか全員天使天使で覚えられないだろ!!

 兄の立場が微妙になったこと以外色々ありますが、盤石と言えましょう。



 あ、父はしばらく領に帰ってもほっぺにチューなしです。

アンジェ一九歳にして母になる。

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