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肆歳 幼馴染をニコポ(ニラメバイウコトキク)ナデポ(カタタタキ)するぜ!

 乳母の息子がいる。

 彼はちょっとするとお兄さん面するので生意気である。

 実際、転んだときはよしよししてくれる。ちくしょう可愛いしカッコイイ。


 こやつになんとかして私が身分能力その他あらゆるステータスが上だと悟らせたいところなのだが今日もコヤツは主人たる私の前で木登りなどをしでかしてくれる。



「むき~!

 むき~!

 その果物とってヒロシお兄ちゃん!」

「ここまでおいで♪ 可愛い『ああああ』ちゃん」


 なお本名はヒロ……とにかく四歳児の舌ではいいにくいからヒロシでいい。

 その果物を私の顔に投げたら生涯この名前で呼んでやる。

 落とすな。泥つけるな。丁寧に扱え。


「おめつけやくがわたしにぶれいだ」

「あらあらまぁまぁ」


 お母さまはどこ吹く風で私にキスしてくれるけど抜本的解決になっていない。



 私はこの領内における絶対的権力者の娘である。絶対主人公といっていい。

 幼少時幼馴染に虐待されていたり、ニートやフリーター、ワープアだったり、収入があっても未婚でいろいろ詰んでいるオッサンオバサン(自分では若くて一〇代の少年少女にモテる資格があると思っているし、精神的にはとても幼い)だったり、事故で死んでしまったり、とにもかくにも不幸な設定ではあるが。



「あ、ちょうちょだ。『ああああ』」

「わああああ?! あたまにあたまに!? とってとっておにいちゃん!」


 ふわふわした花の香りにを楽しみに寝転がる私は春を楽しんでいました。


「虫が全部だめっておかしくない? ちょうちょってかわいいじゃん。ほら『ああああ』の髪の色にあってる」

「そういうのはブローチとかにして!」



 ああ、攻略とかと関係ないのにこの乳兄はなんと生意気なのでしょう。

 こういう時は貴族キムゾクの威厳を見せてやるべきでしょう。



「わたしより有能な人間はいない。いたら敵役キラレヤクなので基本抹殺する。

 わたしがオタだろうがキモ豚だろうが、人生こじらせたオッサンオバサンだろうが、ワープアやニートやフリーターだろうが!

 将来私は成り上がりの末、国王の意向すら気にしない存在になる。勿論モテモテである!」

「……あたまおかしい? かわいい『ああああ』ちゃん。今ちょっと反乱っぽいこといわなかったっけ」



 一つ年上のヒロシは小首を掲げる。彼は五歳なのに帝王学を横で聞いていつの間にか私より覚えている。

 一つといってもその体格差は歴然だし、のら犬に吠えられて怯えていたら助けてくれたりもする。

 あと可愛い。容姿端麗なのはお父様の血筋なので仕方ない。おのれ父上。役得を楽しみおって。普通試しは経産婦でなくばならないのだぞ。



「そういえばおしめとれたっけ」

「まだなのです! おとめにきくことですかむきー!」


 手を振り回すが頭を押さえられて全然届かない。

 ステータスは私のほうが500000倍は高い筈なのですが。



 主人公キミが最強の存在であり、世界は主人公のためにある。

 文化文明レベルが総じて低い(※例外もある)。

 日本に帰れない(※例外もある)。

 繰り返すがその閉じた世界は主人公(に感情移入する読者)を盛り上げるために存在する『楽園』である。



  この領、世界はワタシ(キミ)のための地上の楽園。

 ノスチョセ、ソルビエト、チュカジミキユと言う。


 ワタシ(キミ)の思想や信条を実現するために世界が存在する。

 畑から生える兵隊を護送列車に鍵かけて敵地に放り出すことができる主人公は最強。逆らう党幹部は捕らえてでヒャッハーと粛清(マシンガン)

 ロリコンのブサイクなオッサン、若い燕をあさる自分では若いと思ってるおばさんでもモテモテになれる。


 主人公が睨んだだけでダッシュで〇を開く(ニコポ)。

 頭なんて撫でようものなら○禁して家族ぐるみで従うだろう(ナデポ)。

 教育を受けているのは主人公だけである。


 というか主人公より賢い生意気な奴は家族ともどもヒャッハー。

 食文化も文明も技術も俺色に染めるぜ。文化○革命じゃ~!!



 主人公だけなら物資に困らない。風呂も毎日入る。

 水も炎も思うまま。美味いものも主人公チームだけ独占できる。

 結果的に文明レベルは低い。


 つまり世界で私は絶対無二の現代知識を持つ存在である!

 それこそがしんり!



「『ああああ』ちゃんが頭うった」

「しつれいな! しゅくせいするぞ!」


 美形の幼児がニコリと微笑んでポンポン頭を撫でてくれるので思わず耳まで熱いし。


「ふえええええええええん。おにいちゃん」

「よしよしヾ(・ω・`)

 おぶってやるからかえろうな」


 楽園と思って行ってみて、日本に帰りたくてもなかなか帰れない。

 

 『朝起きたら金〇〇になっていた』



 転生チーハーとして完璧なストーリーではないか。


 などと妄想を始めたわたしは異世界四年目、つまり四歳にして色々拗らせていた。

 一年後五歳になって前世とこっちの世界ゲイムの自我が統合確立にいたり、乳兄にからかわれまくる案件である。



 ただ、彼がこっそりお祭りの日に連れ出して私の頭にかざってくれたブローチは今でも時々頭に飾っている。



「ふん。まぁまぁです。きたないしょみんのてによってできたものにしてはかいがらでできてきてきらきらなのです」

「……三歳の時は素直だったのにうちの妹……もとい主人が色々拗らせていてダメだこりゃお父様……じゃなかった公爵様。ぼくやっぱ留学していいですか」



 だめえええええええ!

 らめええええええええええええええ!


 お兄ちゃんといっしょじゃなきゃやだぁああ!


 四歳五歳はまだ絨毯の上でイヤイヤしてもおうちでは許されます。

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