参歳 オネショタ(ジアン)するぜ!
三歳になりました。
かなりはっきりと言葉を話せるようになりました。
不気味がられるので身内、すなわち公爵家当主であるタロットお父様とその正妻であるシンジュお母様。乳母メイアとその息子であるヒロシ、私の護衛兼メイドであるアンジェ、執事頭のジョンソンといったところでしょうか。
あとメイアの名目上の夫である馬丁頭のミミクは会ったことがないのでさておいて他の人の前では年相応にしかしゃべらないし、おトイレもちゃんとオムツでします。すごく不快ですけど。
わーん。
「メイア~! アンジェ~!」
わざとじゃなくて普通に本能として乳母と戦闘メイドの名前を呼んでしまうのです。
お母さまは何かと忙しく週に二度帰ってくるのがやっとですからね。
お父様に至っては月に数度が関の山。
ほどほど温かいお湯と布で綺麗にしてもらってニコニコ笑いつつアンジェのスカートを引っ張ってご満悦な私を『こらぁ』と突如現れたお母さまがひったくって頬をすりすり。縦ロール髪がくすぐったいです。
恐縮するアンジェとメイアですがお母さまは慣れたものでハイハイと胸を……。
「あ。もう三歳だよね」
「はい!」
お母さまは逡巡してその白くて形のいい大きなものを仕舞います。
「あげない」
「なぜ!」
ガン泣きを始める私をなだめる二人。
「私が出します」
「だめ! 乳離れしないと!」
乳母を止める母。
「やだやだやだおっぱいほしい~~!」
戦闘メイドが控えめな自らの胸元をじっと見ているのが気にかかりますがそれより地面でドタバタするほうが先です。令嬢としてどうかですがまだまだ本能が大事な齢です。
これは衝動と言うか本能的なもので止められません。ええ。
男はみんなおっぱいが好きとかそういうのではないのです。父はさておき。
おのれ美乳に豊乳双方を好きにしおって愛すべき我が父よ!
関係ないけど前世の知識によれば幼少時にお漏らしをするたびに虐待を受けた子供は必要以上の頻尿になるそうですが私には無縁の話です。
泣き止んだら寝ずの番をしているアンジェを呼びます。
ポンポンと身体より大きな枕を叩き、おねしょ用に用意した分厚いシーツの上からアンジェに本をねだります。
「読んで」
「怖れ多くも私のような下賤なものは」
ろうそくの焦げる匂いに鼻をしかめるように彼女は言います。
「アンジェ読んで」
「お戯れを」
「読まないとアンジェに襲われたと」
「読みます」
彼女は立ったまま本を手に取り。
「座って」
「ご勘弁願います」
「いいから。椅子じゃなくてこっち」
ポンポンとベッドを叩くと彼女は土下座をして謝るのですが私は許しません。
「ひざまくら」
「……不逞の輩に襲われたとき膝から頭を落とすことになりますが」
いいもん。
えっと、わるいおじょうさまはその後ひどいめにあっていい女の子と王子さまは幸せに……。
「わるいおじょうさまは幸せになっちゃだめなのかな」
「勧善懲悪といいますが、己を律するために己が持つ美徳は不自由であるとともに幸せになるための鎧です。しかし自らのみに適用できるよう選びあるいはつかみ取りもしくはそれしかなかった一つのそれを他人に無理やり着せても鎧として機能しません。私はそれを悪もしくは傲慢と感じます」
「こんぷらいあんすっていうんだよね」
「難しい言葉をご存知ですね」
もっともっと。次のごほんよんで。
私はメイアやアンジェに甘えながら夜を過ごし、朝はおねしょで起きてしまいます。
またやっちゃったけどミミクさんお願いします……ほんとうにありがとう。