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#どこにでもある異世界転生ファンタジー   作者: 鴉野 兄貴


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30/32

二八再 そんな人生もあるんだぜ!

「うちの可愛い妹を泣かせるバカは月に代わってお仕置きっ……ちょwww待ってwwwこいつよわくねえから辞めれすぺるべあ?!」


 私は思わず彼、幼児の姿をした妖精に飛びつくと彼をくすぐっていました。


「うひゃひゃくすぐるのやめれ?! ……おうふ!? あぶねえ!」


 突き飛ばされて足元を見るとクレーターができています。兄は爆発を背にくるくる周りそのまま両手を高々と上げます。


「だいへんしん!」


 そのまま着地。見た目はまるで変っていません。


「まじびびった。ダークなエネルギーでまじ死ぬ」

「ちょこまかと!?」


 幼女がエネルギー弾を撃ってくるので彼は悩ましげに両手を組んだまま腕なし側転を連打してかわしていきます。9点はつけたい見事なフォームです。


「お兄ちゃん、加護は打ち切りっていってなかった?」

「あん?! 契約なんてまともに守るのは悪魔ぐれーだぞ」


 個人的に二十年以上兄弟やっていて守らないはずがないとは彼の弁。なるほどです。


「てか、こいつそこそこやりやがる」

 すたんと片手前転後、正座して茶を飲む彼の頭の上をエネルギー弾がまた通過。山が吹っ飛びました。

「ふとんがふっとんだ!」


 余裕あるように見えますけど。


 彼は高速移動とマイケルジャクソンばりのムーンウォークを敵に背を向けてくるくるしつつかわしています。どこの嵐を呼ぶ園児でしょうか。



「やっべ。触れたら奴のステータスなんて無効にできるんだがなんとも近づけ」

「あはは。なんとも情けないな。現実をみろ! 大人になれ! お前では私に勝てん!」


 どっかんどっかんいってますが。

 うーん。どうでもよくなりました。



「お兄ちゃん、ちょっと変わって」

「みゅ?」


 私は「能力解放(ステータスオープン)!」と叫びます。


 ==============================



 名:王妃スペルベア

 印:麒麟文様


 ネ申王国歴520年獅子月20日生

 現住所:絶対正義王朝国王宮


 風部屋番号:>GO14(0514)


 指輪もしくは杖:秘宝オヤノケッコンユビワノダイヤネックレス

 専属メイド(ファックス):ルシア(猫獣人)

 パシリコンヤクシャ(イーメール):国王兼石油王アンドレ



 STR:999999999999999999999999999999

 INT:999999999999999999999999999999

 PIE:999999999999999999999999999999

 DEX:999999999999999999999999999999

 SPD:999999999999999999999999999999

 PER:999999999999999999999999999999


 ※一般人の平均値10 最大値:18


 KAR:999999999999999999999999999999


 ジョブ(ガクレキショクレキ):ネ申520獅子月 無職LVネ申 /公爵令嬢LV∞



 スキル(メンキョシカク):


 馬車999999999999999999999999999999


 テイマー(タトウカイ)※(バグって読めない)



 プロフィール(シボウノドウキトクギスキナガッカ):


 公爵家令嬢。魔法適性:炎


 通勤時間:玄関開けたら二分でご飯


 配偶者:国王兼石油王アンドレ 扶養義務あり



 限界能力:


 戦闘力五三〇〇〇〇 職種1 加速能力1 身分:王妃 特記:重複転生ユアストーリー


 家族

 アングロ―ピ家当主タロット 王都宰相

 元コイズ侯爵家令嬢シンジュ=タキカワ 宮廷の花 特記事項:炎魔法適正

 弟セフィロス


 第二婦人 アンジェ 古代帝国子爵家出身 特記事項:毒の身体

 義妹:長女アンジェリーナ


 乳母(実質父の愛人もしくは正妻)メイア 特記事項:神聖魔法使い。元凄腕冒険者

 長女:アンジェリカ






 ============================


 上記しましたがステータス勝負なら私もいい線いくのではないでしょうか。


「え?! え? なんかチートじゃない?!」

「今更……。あなたが要望聞いたからですが」


 取敢えずバットで殴ったら死ぬでしょうかね。ちょうどいいところにパ・ガ島の決して折れない棍棒があるのでこれを使いましょう。



「ルシア! 遊んでいたら旦那さんに諸々の痴態と腐をばらします」


 先程までマネキンになって手を叩いていた猫娘は急に蘇生して口笛を吹くと彼女の夫である大きな黒犬を呼び出します。


 私は肥満体のおじさんの姿のままパンツ一丁で黒犬の背に乗り、バットを手に駆け出します。


「え? ……あなたお、お、お嬢様?」

「細かい説明はあと! クロ! ノワール! 飛びなさい!」


 躍動する黒犬の背からバットを掲げて幼女の姿をした妖に迫ります。

 巨大なエネルギーボールに私はバットを大きく振りかぶります。

 地面が盛り上がり白い毛並みの竜が首をだし私と並走。お互いに微笑みあいます。


 男なら死ぬ気でやる。女なら野球一筋宇宙ガッツで。

 私は正面から巨大エネルギーボールを迎え撃ちます。


 父はあらゆる運命に対して対策を打っていました。

 それは悪役令嬢としての運命に抵抗する術だけではなく、例えば、理外の自称神に打ち勝つ竜神の加護を持つ国の宰相になることなどです。

 私の胸に刻まれた麒麟文様は伊達ではありません。


「リズ! 誰とも結婚できないあなたの呪いの元凶をここで砕きます!」

「了解!」


 リズ。何故あなたはM134ミニガンを担いでいるのですか。

 恨み心頭はわかりますが人間にそれは担げません。しまってください。 


「必殺! ティアマト彗星打法!」


 気合を入れてパ・ガ島に住まう精霊の加護を込めた棍棒でフルスイングです。

 その動きと共におなかと胸に剛毛生えた私の胴にヒビが入ります。毛むくじゃらの太った腕は砕けるとともにその下の私の細腕が露出していきます。

 砕けた破片は全て収束し、エネルギーボールの形を成して。


「キミのわぁああ!」


 決して折れないパ・ガ島の棍棒が粉々に分裂して全てエネルギーボールの姿になり妖に降り注ぎました。すごい勢いで空に飛んでいきます。たーまやー。



「おー。すげー!」


 ぱちぱちとやる気のない拍手をする『兄』を軽く小突きました。



「くるの遅いし」

「……っ!? 痛ェ~なぁ」



 悪態をつく彼。

 よく見ると周囲の人々は砕けていません。息子イラも。



「あのおじさん、私の前世のひとつ?」

「前世ってか物語っていうかあんまかわんないな~」



 アンジェに読んでもらった物語の私。

 前世と思っていた記憶の数々。

 今まで読んだ小説やアニメ。そしてゲーム。


「全部わたしだよね」

「まぁ解釈は任せる」


 意図的に悪いところを切り取って最低と思わせるけど、あのおじさんの人生も悪いものでもない。カブトムシ取って遊んでいる姿はかわいかった。



 私は足元でのたうつ毒々しい芋虫をみながらつぶやきます。


「あの幼女の正体ってコレ?」

「だな」


「義姉さまってかスペルベア。これ、夢でしょうか現でしょうか」

「どうでもいいじゃん。元凶はたぶんコレだろうけど」



 ふんどこ。

 うわ。汁多いしキモいし。



『借金が清算されました』


 ふわっとした光と共に私の中のチートが急速に抜けていきます。

 素の私の腕は細く頼りないのですがそれはそれ、私は一人ではありません。

 もっと大きな力を私は存じています。



「スペルベア? どうした」


 セレモニーは続きます。

 私は夫に微笑みかけ、改めてリボンにハサミを入れます。


 芋虫もいつか蝶になるのですよ。

 蝶がそれを望むかは別問題ですけど。

 私はお気に入りの蝶のブローチに軽く触れて息子に微笑みかけます。


「ほら、泣かない。お母さまがお兄様に頂いたこれを差し上げますから」



 あの幼女もどきはああやって調子に乗せた魂に絶望させ魂を刈り取り集めて格をあげようとしていたのでしょうね。

 今となってはどうでもいいお話。



 今まで読んだお話。

 読みかけて放棄したお話。

 生きて死んでまた生きる物語。


 全部私の物語。



 進むもよし。やめるもよし休むもよし繰り返して読むもよし。

 私、スペルベアの人生は繰り返したり巻き戻しは出来なさそうですが、それはそれでいいのではないでしょうか。



 急にふくらはぎを軽く蹴られました。

 私の『兄』だった少年とその自称弟さんがにっこり笑っています。



「じゃな。君を生きな」

「まだ会ったことのない君を探しに行くのの!」


 またね。

 別に転生トラックだのプリティウスに轢かれなくても私の物語はたくさん、いくつも続いている。


 書斎に置いた読みかけの本たちの中にも。

 今起きている人生の中にも。

 心に思い描く誰もがまだ見たことない物語の数々も。

 ちょっとしたイタイ空想たちも。



 いつかそれを書き留めるんだ(ショウセツカニナロウ)

 マイストーリーとして。

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