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#どこにでもある異世界転生ファンタジー   作者: 鴉野 兄貴


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29/32

二七災 ゆあすとーりぃ( ´,_ゝ`) プッ だぜ!

※ あらすじにもありますがこのお話はなろう版『ユアストーリー』です。

 ただ、作者にはあの『受け手を超絶馬鹿にしているのにラブストーリーと言い切っており、愚弄の自覚すらない圧倒的な差別感』を再現することができませんでした。

 世界平和はあなたとともに。

 軌道エレベーターが完成しつつあります。


 愛する息子イラを抱き、公私にわたり長くパートナーだった夫にして国王こちらでは石油王のアンドレと共に私は進み出ます。


「では軌道エレベーター建設に尽力してくれた功労者、スペルベア様と夫のアンドレ様からお話があります」


 ニーホリが遠くで半泣きで手を叩いていますが彼も功労者です。

 ニーホリだけでなく彼の娘のユイ、息子のカズヒトさん、ミライさん。そしてマコト。

 カミラちゃんにその夫となったヨーイチさん。

 パ・ガ島の自衛組織や酋長さんたち。


 軌道エレベーター完成に尽力してくれたアラクネの『コイマドウイト』さん。


 今では皆、大切な仲間です。



 ほら、イラ。あなたはもうお兄ちゃんなのだからぐずらないの。

 蝶ネクタイを無理矢理つけたら彼はぐずってしまいました。

 社交的とは言い難い子なので仕方ないですが彼は王にならねばならないので大変ですね。


 向き不向きがあるけれども運命はあなたを選んだのです。

 来るべきときはしっかりしなさい。今はまだ泣いていていいからね。



 皆が拍手してくれます。

 私は着工工事セレモニーのリボンにハサミを入れて。



 ちょきん。



 音がしなかったです。ハサミも。人の声も。


「イラ?」


 私のドレスをつかんでいた息子はぐずった顔のまま動きません。

 にこやかな笑みを貼り付けてマネキンのように固まっている夫に話しかけます。


「あなた?! アンドレ!」


 ガタン。

 音はしませんでした。


 だけど私は振り向いていました。


 私のドレスをつかんでいたイラがたおれ、ガラス細工のように割れていきます。

 駆けつける私の目の前でイラは砂のように崩れていきます。



 急に拍手が始まります。


 夫が。観衆が。


 前世の家族が。

 メイドであったアンジェお母さま。

 実父タロット。母シンジュ。

 乳母のメイア。


 家族たちはうつろな目のまま拍手だけを繰り返します。

 弟や妹たちもそうです。


 弟セフィロス、メイアの子アンジェリカ、アンジェの子アンジェリーナは『流石お姉さま』『素晴らしい! 私には考えもつきませんでした!』とあざけるように連呼しています。

 その身体はもうマネキンのよう。



 動かないマネキンの腕だけが適当に動いて拍手をし、体幹バランスを崩して倒れこみ砕けてなお。


「やめて」


 さらに拍手がします。分家のフェリクスさんたちが『このぉ! 我が野望があ!』などと壊れたスピーカーのように叫んでいます。


「やめなさい」


 喝采が轟きます。


 私を褒め称える声がどこからか、そして一段と高まっていきます。



「名前は適当」



 Aを連打する映像が見えます。



「ステータスは最強」

「貴族でスタート」



「テンプレてんこ盛りチートでよろしく!」

「これ、こんなに混ぜたらわけわからないと思いますよ」



「そうなのか。どうでもいいから任せた」


 投げやりな中年男性の声がします。この声を私は存じています。


「『今日の物語イッサツ』。40歳から60歳男性 好きな作品ジャンル:TS転生 逆転人生 ほのぼの SF 自立した女性 乙女ゲーム ダンジョン 成り上がり 魔王 貴族 政略結婚 英雄…… なんだもう選べないのか?」

「どこまで贅沢なのですか。多分破綻しますよ。それこそダンジョンで現実世界を侵攻して地下からゾンビパニックとか」


 タコはないがあまり健康状態のよくなさそうな掌が音を立てる。


「いいな。HYPERLOOPでゾンビを輸送だ。普通のシールドマシンより自己増殖するダンジョンのほうが掘削速度も脅威度も高そうだし、軍事的にも革命ではないか」

「やるのですか」


「ついでに宇宙ステーションも建設したいな」



 子供めいた発言にため息をつく声。


「どうなっても知りませんから!」

「あん? お前若いくせに生意気なんだよさっさとやれよ」



 殴打の音。



「ね。ね。しってるぅ? このサービスの利用者のほとんどは五〇近いおっさんおばさんらしいよ?? それが若返って一〇代の女の子とか若いイケメン侍らせるストーリーが人気なのって超キモくないかな」



 女の子が私の前にいる。

 思い出した。あの土下座幼女だ。

 『私』が『土下座させた』。


「しかも転生てwwww 死なないと駄目。死んでもダメって自分でもわかっているのだよねwwwww不幸だよねwwwwwwwwwwwwwプゲラwwwwwwww」



 自らの選んだストーリーを楽しむシステム『ユアストーリー』。

 私はそのプレイヤーだった。



 名前登録の実名はダメ。

 ああああとかつけるな。

 家名いいいいは許可できない。


 18禁展開はない。

 具体的な説明はできない。あえて言うならすべてが駄目。


 システム使用料はかからないが利用中は広告は入る。ソシャゲー、えっちな女優募集、エロ漫画などなど。


 何故小童にシステムを利用してやっているわたしがあれこれ言われるのか。

 私は彼を殴打し土下座させ、可能な限りのてんこもりでストーリーを開始した。



「そして、こうなった」


 幼女は嘲り笑いながら鏡で私の姿を映す。

 禿げあがり、腹の出た中年。私がいた。



 緑輝くパ・ガ島。

 昆虫を追い、花を探し、そして微笑みあう人々。


 私の人生と真逆と言える。

 若者に嫉妬し、あるいは劣情を抱き、そして暴力を振るう。

 どこで間違ったのだこんな人生。死んでやり直す勇気も……。



「おーい。おーい?」


 聞きなれた声がする。

 私は、その声の主が嘲り笑う幼女の後ろから聞こえているのがわかった。


 小さな足をてくてく進め、釣り目を不敵に細め、おもちゃの剣を手に歩を進める彼は。



「お……にいちゃん?」

「よ。おバカな『ああああ』ちゃん。いんや、スペルベア嬢。げんきぃ?」


 彼はヒューとつぶやくと投げキスを私に向けて。



 嘲り笑いを浮かべていた幼女は慌てて振り返ります。


「お、お、お前は誰だ!」


 少年はちちちと指を鳴らし呟きます。


「当ててみな。ハワイ旅行に招待してやらあ」


 そしておもちゃの剣を引き抜き、輝く長巻にして微笑みます。


「最悪な物語を修正するつもりで破壊する……メアリースーってやつかもしれねえが」

「そのひと、うちのお兄ちゃんです」


 私が呟くと彼はヒューとつぶやきます。


「違うな。お姫様を守る騎士なのさ」


 そういって彼はわたしと、幼女の間に立ちました。

参考資料

https://syosetu.com/issatu/

転生だのやりなおしだの若返りだのヒロインがティーンエイジャーだのな作品の対象年齢は実際見たらヒクほど高い

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