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All I ask of you

「君は元の世界に戻るんだ」


 その言葉を聞いた瞬間、私は「嫌よ」と声を張り上げる。


 本当の私が仮死状態なんてそんなのどうでもいい。今の私にとって大事なのはいかにエリックの側にいられるか。それだけが大事だ。


「ダメだ、戻るんだ」


 エリックに厳しい口調で言われる。

 だが、私もここで引くわけにはいかない。

 私はゴクリ、と唾を飲む。


 ここで掴まなきゃ。誰でもない。――自分自身の幸せを。


「私は前も言ったと思いますけど、エリックのことが好きですよ。だから離れたくないんです」

「……」


 シンと辺りが静まり返る。


 そりゃそうだ。こんなの公開告白だし。


 エリックは黙って、私を見つめている。


 好きなのか、嫌いなのか。私と同じ気持ちなのか。ドキドキというよりも、背中に冷や汗をかいてしまう。


 しばらくするとエリックは一度息を吐いてから口を開く。


「最初はファントムへの当てつけとして君を呼んだ。ファントムの復讐が上手くいくか、ただそれだけで君のことを見ていた。けれど今は――」


 太陽がエリックの顔を照らしていく。光が傷に上手く当たり、ここからではエリックの口元が見えない。

 けれど、耳にエリックの言葉がはっきりと聞こえた。


「今は――君のことを好きになっていたみたいだ」

「っ!」


 思わず顔が赤くなってしまう。それと同時に「だったらどうして」と疑問を口にする。


「どうして元の世界に戻れだなんて言うの。私はここにいたい。戻ったって嬉しい事なんて何もない。私はここにいてエリックの側に」


 私はグッと拳を握る。


 現代に戻ったって誰も私のことを愛してくれない。けれどここならエリックがいる。エリックも私のことが好きなら、わざわざ離れる必要がないじゃない。


 けれどエリックは首を横に振る。


「ダメだ。それでも戻るんだ」

「なら、私はどうすればいいの。一人ぼっちで現代にいろっていうの」

「いや」


 エリックは姿勢を正して手を差し出す。私はその手をおもむろに掴む。


「私が君のもとに行こう」

「…………はい?」


 思わず私の目線はエリックの顔と掴まれた手とを行ったり来たりしてしまう。

 他の攻略キャラ達も一体何を言っているのかと呆けている。


 エリックが私のところに来る? つまり私のいる世界、現代に? そんなこと出来るのか。


 そんな私の心が読めるのかエリックは手を掴んだまま「出来る」と強く頷いた。


「そもそも君をここへ連れてこれたんだ。私が君の世界へ行けない、ということもないだろう」

「そりゃそうかもしれませんけど」


 やはり不安だ。もしエリックが現代へ来なかったら……。

 ただでさえ現代に戻っても何もいいことがないのに。ましてやエリックがいないなんて。

 ――信じたい。けれど不安。


 そんな私の不安を拭い去るようにエリックは再び強く頷いた。


「必ず君のもとへ行くと誓おう。だから信じて待っていてくれ。君がどこへ行こうと私は君のもとへ行くよ」


 エリックは私から手を離し、籠にある林檎を手に取り一口かじってみせた。そして今度は私に林檎を渡す。

 私もエリックにならって林檎を一口かじる。シャキッといい音がなって口に酸っぱさと甘さが口に入ってくる。


 私は「仕方ないですね」と無理に笑って見せる。


 本当は不安で不安で仕方がない。それでも……。


「待ってますよ。だから絶対来てくださいよ。そうじゃないと、私、許しませんからね」

「ああ」


 口の中には林檎の甘さだけが残っている。


次話で完結します!完結となると寂しくなりますね…。

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