表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生者と同居中!  作者: 小鳥大軍
1/1

第一話『神さまってなんか少し適当だよね』

深い深い闇の中。視覚も聴覚も上手く働かない中で、ただ一つあるのは恐怖のみ。

どうして俺がこんな目に…。

なんて嘆いていていても意味がない。早くここから脱出しないと。アイツがいつ襲ってくるかもわからない。

そう意気込んで移動を始めたのはいいのだが、果たしてここに出口というものはあるのだろうか。

先程からどこかでポタポタと水が落ちるような音がなっているのが気になる。

どうやらここには水源のようなものがあるらしい。もしここに長居する事になったとしても、アイツにさえ気をつけておけば少しの間は大丈夫そうだ。

いや、出来れば早く出たいのだが・・・

ともかく、出口を求めてさまよっているその時だった。

ふと、今までなかったはずの光を見つけた。

急に現れたものだから驚いた。

そりゃあもう少し腰を抜かしかけるほど。


ところで、話は変わるのだが、人間という生物は、極限状態で救い又は救いのようにに見えるものを見つけると思わず縋り付いてしまうらしい。

まさしく今の俺だ。

というふうに、俺は砂漠にオアシスを見つけた旅人のように、明かりに向かってフラフラと飛んで行く虫よろしく、その光に向かって進んでいった。

進んで行ったのはいいのだが・・・・・・

?俺は今光に向かって歩いているはずなのになんでその光はだんだん遠ざかっていくんだ?

俺は足の回転スピードは、いつのまにか走っていると言っても過言ではない程まで上がっていた。

急がないとあの光は消えてしまって何か危ない事が起こる。

そう、直感ーーちなみに、この直感は大いに外れていた。この時から俺は自分の直感を一切信じない事にしたのだったーーしたのだ。

するとなんという事でしょう。光はだんだんと上に上がって行き


モフ!っと何かにぶつかった。

その正体を確かめるべく、俺はその物体を見上げると


・・・・・・アイツがいた。

簡潔に言うと、巨大なネコ。そう、巨大なネコちゃんなのである。

ああ、全くなんだって俺がこんな目に。

そのネコの前足にしがみつきながら、俺は自分がここに来た経緯を思い出した。












時は遡り、昨日の朝。

我がシテン家に、激震が走った。それは


「私、冒険者になる!」


俺の可愛い(可愛い)妹が突如そんなことを言いだした事によるものだった。

まあ、確かに妹はもう16歳で、仕事に就くことは可能なのだが、なぜよりにもよって冒険者?


あんな収入が全く安定しない上に命の危険があるような職業に就くのは・・・いや、別にお兄ちゃんは冒険者の事を悪く言ってるわけじゃないよ?ただ、お前にはすこーしとっても似合わないっていうかな、女の子がやるような仕事ではないかな〜っていうか・・・え?お隣のエリちゃんは冒険者やってるって?よそはよそ、ウチはウチ。痛い。ちょ、殴るな殴るな。お前、最近力強くなって来てんの自覚しろ!いや、力強いくらいで冒険者にはならないって、本当本当。ワツミさんが言ってたから。そりゃまあ、ワツミさんは嘘つきだよ?でもあの人たまに本当のこと言うんだよ。ほら、この間の天気予報。あれワツミさんが言ってたんだからな!少し待て妹よ。剣はまずい、剣は。


とそんなやり取りがあったりなかったり。

結果として妹は怒って近場のダンジョンに向かって行ってしまったのだが、俺は最初のうちはムカついて追いかける気にはならなかった。

それでも、心の底の方で妹を心配する気持ちがあったのか、それとも頭が冷えたのか分からないが、少し時間が経った時にだんだんと焦る気持ちが訪れた。


アレ?結構ヤバくね?


そう、ヤバいのである。

か弱い少女が1人でダンジョンに行くというものは、素手でライオンと戦った方がまだ生き残る可能性がある程ヤバいのである。

そう思った時からは早かった。

一番近くにあった武器になりそうなものをとり、防具やお金などそっちのけでダンジョンに向かったのだった。

この時の俺の判断は甘かった。

砂糖よりも甘かった。

妹は、せいぜい入り口付近にいるだろうと判断したのでこんな軽装で行ったのだが、いざダンジョンに着いてみたらどうだろう。妹のカケラさえも無いではないか。

仕方ないので、俺は徘徊しているモンスターに気づかれないように進んで行った。

そして、色々あって今に至る。

まあ、特にこれといったことは無かったのだが、一回変な割れ目に落ちてしまった。

そして、それが初めの邂逅だった。

先ほどまで見かけていたスライムだのコウモリだのと言ったモンスターとは違う。

何が違うって、まずサイズが違う。

次に迫力が違う。

最後に、状況が違う。

さっきまでは、見つからないようにソロ〜りソロ〜りと移動してきたのでこちらが一方的に見ていただけだったのだが、今回はバッチリと目が合ってしまった。

そう、目が合ってしまったのである。優に5mはありそうな巨大なネコちゃんと。

蛇に睨まれたカエル、と言うことわざが東の国にはあるらしい。

まさに、だ。

これぞ、だ。

つまり、俺は全く体が動かなくなってしまっていた。

思考回路も凍りつき、ネコちゃんも止まっていてくれたため、数分はその状態でいたのだが、いかんせんとまった時の体勢が悪かった。

普通に歩いていたところでーー普通と言ってもモンスターに見つからないように細心の注意はしていたがーーネコちゃんと目が合ったのだ。止まるつもりでないから、その状態で止まるには少しばかり厳しい状態で固まってしまった。

姿勢はかなり前傾姿勢。

普段の俺ならものの数秒で崩れているであろうその姿勢だが、体が硬直してくれた事が幸いし、この数分間は持ってくれた。だが、それももう限界らしい。

だんだんと、だんだんと体が前に傾き始めた。

そして・・・・・・


「ヴにゃーーーーーー‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」


体が倒れたのと同時にネコちゃんは襲いかかって来た。あるいは、じゃれて来たのかもしれない。

だが、この身長差においてそれらは同じ意味となる。

なんとかかすり傷だけで逃げ切れたものの、次に遭遇した時も生きていられるかは分からない。

そう、思ってたのになぁ。

時は現在に戻る。






俺は、しがみついている足を離し、一気に逃げた。

まあ、すぐに捕まったけど。

ネコの瞬発力ってすごいな。

と、捕まってですね。

襲われてですね。

血まみれになったわけです。

そこでネコちゃんが帰ってくれてくれたので良かったのだが、失血量が半端じゃなかった。

だんだんと体から熱が失われて行くのがわかる。

あ、これ死ぬな。

そう思ったからなのだろうか?どこかから何かの声が聞こえてきた。


『この男がいいじゃろう』

『ええ〜こんな普通そうなやつ〜?』


失礼なやつだ。これでも近所の人たちからはイケメンだって言われてるんだぞ


『お前さんが普通のやつって言ったんじゃろがい』

『転生って普通新しく生まれるもんなんじゃないの?』

『それもお前さんが頼んだことじゃろう。現地の知識が最初から欲しいなら今まで生きてた奴の肉体に入らなくてはいけないと、さっき説明したはずじゃが…』

『おう!そうだったな。で、俺が頼んだチート能力は?』

『もちろん、お前さんの精神に結びつけておるよ。はぁ』


心なしか、おじいさんの方は疲れているように聞こえる。


『じゃあ、行ってきまーす』

『おう。行け行け、早く行ってしまえ。まったく。なんで儂はこんな奴を選んでしまったんじゃろなぁ』

『まったく。神様にも嫌われるとはな。やれやれだぜ』


どこか、つば付きの帽子のつばを触りながら言っているような気がしてくる。


『ハァ。では、貴方に祝福を。体はお前さんが入った後に治してやろう。ほれ。もうすぐ死ぬぞい』


確かにもうすぐ死にそうだけど。

血まみれだけど。


『よーいドン!死体に向かって一直線!』


そして


『あれ?あの遺体、まだ生きてるような……儂知〜らね』


その声の主は俺に入ってきた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ