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8話

「いや~、あの頃は若かったね~」

 

 アルコールが気持ちよく身体に回ったからだろうか、一年近く経過した今ですら苦い過去でも滑らかに口が動く。


先程まで僕の二つ隣に座っていた友和君が帰ってから何分たったろうか?


ほぼ1年ぶりに出会った彼は白音さんとの関係にまだ悩んでいるようだ。


「そうね、最初はどうしちゃったのかと思ったわ……それで、友和達の通っている大学はすぐに見つかったのよね?」


 隣で座る麻由さんがほのかに顔を赤くしながらも意地悪っぽい笑みで僕を見つめている。


「まあね、友和君もそこそこ有名人だったからさ。すぐに彼と白音さんの通う大学はわかったよ、スタッフに二人のことを知っている人間も居たしね」


「それで貴女があの子に避けられるようになった事件があったのよね?」


「あのときのことはあまり言わないでくれよ。我ながら恥ずかしくてしょうがないだからさ……それにそうなるまでは少し間が空いてるよ」


「ふ~ん、そうだったっけ?」


 ニヤニヤする彼女。


 本当にこの人は泣き虫なくせに変なところで意地が悪いな~。


「やっぱり喋らないと……駄目?」


「当然、恋人に隠し事はするものじゃないわよ?」


「恋人ね……。その恋人が振られた話を聞きたがる君も大したものだよ」


 嫌味でもなく、多少の苦笑をこめながら口から出す言葉はアルコールにも近い陶酔感を感じさせる。


そういえばひさしぶりに出会った僕らが付き合っていることに彼は驚きを隠せないようだったな~。


その顔を思い出して少しだけ溜飲が下がったおかげだろうか?


あの後の醜態を語っても良いと思えてきた。


この可愛らしい同盟者?


もしくはパートナーに……ね。


「わかったよ……それじゃ、もう一杯だけ飲ませてもらえるかな?」


「いいわよ~?好きなだけ飲みなさいな、それとも『一服』する?」


「わかってていってるでしょ?僕は肺にわざわざ煙を入れる趣味はないよ、何より非合理だからね」


「あら、残~念ね」


 妙なところで可愛げのある『今の彼女』の仕草で少しだけ萌えながら僕はことの顛末を語りだす。


 そう、『彼が彼女と別れないことを決めた理由を……。』



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